産総研、福岡市水道局/水道管腐食度推定システム、全国初の市街地実証へ

2025年9月1日 技術・商品 [11面]

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 産業技術総合研究所(産総研)と福岡市水道局は、水道管を腐食させるリスクが高い地下の土壌状況を非破壊で測定する「水道管腐食度推定システム」の実証実験を1日に開始する。多大な労力と時間がかかる掘削調査をせずに水道管の更新時期を把握できる新技術で、維持管理の効率化が期待される。市街地での実証は全国初で、中央区天神など市内6カ所で行う。市内での実証期間は2026年3月末まで。
 推定システムの研究開発は内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の採択を受け、23年度から進めている。実証開始に先立ち、8月29日に同市西区の水道技術研修所で報道関係者に実証で使う探査装置を公開した。
 水道管の腐食度は埋設後の経過期間や管渠の材質に加え、周囲の土壌の組成や酸性度にも左右される。実証では無人走行車両を備えた電気探査装置を操作し、高周波の交流電流を利用してアスファルトやコンクリート路面を傷つけずに、管渠周辺の土壌状況を測定。探査データを基に更新計画を立案し、従来にはない予防保全型の維持管理の実現を目指している。
 産総研スマート監視技術研究チームの神宮司元治研究チーム長は「この技術は水道管の劣化につながる原因となる場所を見つけ出すことができ、計画的に水道管の更新を進めることが可能になる」と期待感を示した。SIPの採択期間は27年度まで。他都市での実証実施に向けた協定締結の協議を進めているとし、「実証を重ねることで信頼性を高め、全国的な普及につなげたい」と展望した。