建設各社/山岳トンネル発破掘削で技術開発/装薬作業自動化へ

2025年10月22日 技術・商品 [3面]

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 山岳トンネル工事の発破掘削で、建設各社が自動・機械装薬技術の開発や現場実装に力を注いでいる。2024年3月に改正された厚生労働省のガイドラインにも呼応。肌落ち災害リスクが懸念される切羽付近での作業を無人化、遠隔化して現場従事者の安全確保や作業効率の向上に役立てる。
 厚労省の「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」では、施工者に求める措置として切羽付近作業をできる限り機械で実施するよう推奨している。機械による浮石落とし作業などにとどまらず、新たに最新デジタル技術を活用した装薬作業の遠隔化などが盛り込まれた。ある建設会社の担当者は「当社も含め自動装薬技術の開発が相次いでいるのは、厚労省指針の改正が一つのきっかけになっているはずだ」と話す。
 大林組は、長野県の施工現場で「自動火薬装填システム」を実証した。慶応大学が開発した「リアルハプティクス」と呼ぶ触覚の再現技術を導入している。現実の物体や周辺環境との接触情報を双方向で伝送し、遠隔操作するオペレーターの手元で再現。ロボットアームでの繊細な作業に成功した。26年度の本格導入を目指す。
 大成建設も山形県の施工現場で、全ての爆薬を機械装填した試験発破に成功した。日油が開発した無線電子雷管の「ウインデットIIシステム」と、大成建設が保有する無線電子雷管など爆薬の機械装填装置「T-クイックショット」を融合。無線電子雷管を含む爆薬の供給から装薬孔への装填に至る全工程を機械化した。
 前田建設は、3本のブームに自動装薬システムを搭載した「3ブーム自動装薬専用機」を開発した。全自動ドリルジャンボからの穿孔データを無線通信で受け取る。装薬孔の位置や角度などの情報を基に、専用機がブームを孔の位置に合わせる。
 戸田建設が実用化したのは「To-RIGGER(トリガー)」と呼ぶ爆薬装填ロボット。コンピュータージャンボの先端に爆薬装填ホースの自動挿入装置を取り付け、AI搭載のロボットアームで装薬孔の位置を検出してホースを素早く挿入・装填する。
 熊谷組は爆薬を遠隔装填するシステムとして、親ダイ(雷管を取り付けた発破薬包)の機械装填技術を開発した。親ダイの装填パイプ先端への供給から、発破孔内の挿入までを無人で完了。無線電子雷管を利用した親ダイと組み合わせ、装薬作業の完全自動化を実現する。
 建設各社は、支保工の建て込みやロックボルト打設作業、コンクリート吹き付けの遠隔・自動で作業する技術開発にも注力。山岳トンネルの工程全般で作業の無人化を目指している。