鴻池組はSRC造の建物で、配管・配線を通すため壁や床に設けるスリーブ(貫通孔)の検査を効率化する新システムを開発した。AIとAR(拡張現実)を組み合わせ、スマートフォンやタブレット端末でスリーブを撮るだけで位置や寸法を自動計測。その場で結果をBIMデータと照合し、瞬時に正誤を判定する。検査の大幅な時間短縮と精度向上を実現した。本格導入を目指し機能拡充と実証実験を進める。
「スリーブリング」は設備エンジニアリング部の若手の要望をきっかけに、日本コンピュータシステム(東京都港区、川部弘明社長)と共同開発した。現場で必要な道具は、専用アプリをインストールしたLiDAR(ライダー)機能付きiPadとARマーカーのみ。スリーブの断面に識別情報のパターンを印刷したリング状のラベルを貼り付け、画面内のAR空間でBIMデータを重ねることで視覚的に設置状況を突き合わせられる。
検査結果はウェブアプリを通して逐次共有されるため、現場以外でも確認可能。帳票としても出力できる。2人一組、手作業で一つずつ測定していた従来に比べ、手間を省きながら検査漏れを防ぐ。
8月29日に茨城県つくば市の鴻池組技術研究所つくばテクノセンターで実験を公開した。作業員はPマークを基点にAR空間の位置を調整後、タブレット端末でモックアップのスリーブを撮影。設計データとの整合性を素早く確認した。
鴻池組の小川雅史執行役員建築事業総括本部技術本部長は「人口が減る中で売り上げを伸ばすには生産性を高めるしかない。ICTやロボットの開発に力を入れていく」と述べた。