前田建設が山岳トンネル現場で、安全性や生産性を高めるさまざまな技術を相次ぎ導入している。支保工の建て込みを全て自動化するロボットを開発。4現場に本格適用し、作業員の切羽直下への立ち入りをなくした。ロックボルト打設に機械化施工を取り入れ、作業時間を短縮するとともに省人化にもつなげている。最適な発破パターンと適正な火薬装填量を自動作成するシステムを導入。余分な掘削量の低減を実現した。
上半支保工と下半支保工を自動で建て込む「全自動鋼製支保工建て込みロボット」を開発し、国土交通省が発注した四つのトンネル現場に導入した。上半支保工に取り付けたミラーで計測し、頭付きアンカーの採用で設計位置へと正確に誘導する。エレクターと一体となった吹き付け機で支保工建て込みとコンクリート吹き付けを同時施工。熟練度に依存しない「ワンボタン」の作業で省人化にも寄与する。
天端のワンタッチ継ぎ手や頭付きアンカー、計測用ミラーの回収機などにより、上半支保工建て込み時に切羽周辺や直下での作業が不要。安全性が大幅に高まった。下半支保工もエレクター一体型吹き付け機で建て込む。上半と下半の接続部にワンタッチ継ぎ手を採用し、切羽周辺や重機近傍での作業を回避できる。
古河ロックドリル(東京都千代田区、山口正己社長)が開発したロックボルト施工機「ボルティンガー」を国交省発注の1現場(トンネル延長1435メートル)に導入。せん孔、モルタル注入、ロックボルト挿入の三つの装置を1ユニットにしてブームに取り付けている。ユニット先端を切羽に固定し、各装置をローテーションさせて作業を切り替え、一連の工程を連続で行う。運転席から遠隔で操作する。
従来工法と比べ1サイクルの施工時間を約10%短縮。人員は5人から3人(オペレーター2人、ポンプへのモルタル投入1人)で施工できることを確認した。省人化された2人はロックボルト作業に並行し、仮設備の配管・電線類延長作業に従事。これまで1カ月当たり2日程確保する必要があった仮設備施工日がなくなり、1カ月当たり10メートル程度、掘進の進捗を伸ばすことができた。
「発破パターン作成支援システム」を国交省発注の別のトンネル現場(延長1163メートル)に採用。変化する地質などに応じた発破パターンと、適正な火薬装填量を自動作成できることを確認した。さらに発破工程の適正化により、トンネルの計画掘削断面以上の余分な掘削量(余掘り量)の40%低減を実現した。