大成建設/3現場で建機の遠隔操縦に成功/数百km先からも可能に

2025年9月19日 技術・商品 [3面]

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 大成建設が建設機械の超遠隔操縦に相次ぎ成功した。高速・大容量通信が可能で低遅延なLTE回線を複数束ね、衛星通信と同時利用する「マルチリンク」技術を導入。5~9月にかけて3現場で数十~数百キロレベルの遠隔操縦ができると実証した。映像やIoTデータを活用する自社の現場管理システムも併用。デジタルツインで建機の配置や稼働状況をリアルタイムに可視化した。メンテナンス担当者と建機の位置関係を常時監視し、安全性と作業効率を両立している。
 5月には東京都大田区の「呑川合流改善貯留施設立坑設置工事」(発注者・東京都大田区)を実証フィールドにして、現場から約230キロ離れた愛知県豊川市からケーソンショベルを操作した。岡山県里庄町の「令和5年度玉島笠岡道路浜中地区東工区改良工事」(発注者・国土交通省中国地方整備局)では、8月に約300キロ先の福岡市南区から油圧ショベルとクローラ型ダンプトラックを操縦した。
 さらに9月1~4日には群馬県藤岡市の下久保ダム(管理者・水資源機構)で、約90キロ離れた横浜市戸塚区の大成建設技術センターから建機を操作し、上流域の堆砂を処理した。
 3現場では、マルチリンク対応のソリトンシステムズ製遠隔操作ソリューション「Zaoシリーズ」を採用した。自社の現場管理システム「T-Digital Field」と組み合わせ、長距離通勤や転勤を極力回避。都市部オフィスなどから安全で効率的に作業できる環境を構築した。従来の無線LANや特定小電力型無線は、通信距離が数百メートルに限られていた。マルチリンクで数百キロレベルの遠隔操縦を可能にした。
 下久保ダムでの実証は、内閣府SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)第3期課題「スマートインフラマネジメントシステムの構築」の一環。サブ課題A「革新的な建設生産プロセスの構築」(研究開発責任者・永谷圭司筑波大学教授)の研究成果に位置付けられる。