□試作品の操作データ解析、改善策を可視化□
産業技術総合研究所(産総研)は、建設機械の操縦室設計で、開発者がリアルタイムに試作品を体験しながら設計作業が行えるデジタルツインシステムを開発した。仮想空間上で操縦室内の様子を再現し、解析やシミュレーション結果を即座にフィードバックしながら、試作品の改良が可能になる。
実際に建機のアームレスト(肘置き)開発で使い、有効性を確認した。産総研では、建機設計プロセスの短縮や評価指標の適正化などが期待できるとしている。
デジタルツインシステムは、産総研人間社会拡張研究部門とコマツで作る「コマツ-産総研Human Augmentation連携研究室」が開発した。運動計測装置と建機の操作映像を表示する表示装置を建機運転席の実寸大模型に組み合わせた。
模型で開発担当者が試作品の操作体験を行うと、シート調整量やレバー角度、操作者の全身運動を計測し、デジタル空間に再現。関節可動域に対する関節角度や関節トルク、身体の移動軌跡、視界などを解析し、リアルタイムに可視化する。デジタル空間で再現した操作データを基に、設計の改善に向けた議論が可能になる。
動作計測にはOptiTrackのモーションキャプチャシステムMOTIVEかCaptury、動作解析には産総研が開発したデジタルヒューマンソフトウエア「DhaibaWorks」、改善検討のための可視化にはDhaibaWorksとNVIDIAのOmniverseを組み合わせた。
計測した操縦者の動作を運動学・動力学の観点から定量評価でき、Omniverseと連携させることで高品質なレンダリング、XRデバイスとの連携、そして設計用のCADと連携もできる。
実際にアームレストの開発では、既存のアームレストが操作を阻害していると考え、操縦者の肘の軌跡データをCADに取り込み、これを基に動作を阻害しない新たな設計を提案。関係者間で共有、議論することで有効性を確認できたという。








