山間部にある建設職人の育成校を訪れた高等専門学校の生徒たちに、地元の食材をふんだんに使った夕食がふるまわれた。クマやシカのジビエ料理、アユの塩焼き、「今年最後」と紹介された朝採れのトウモロコシ。食卓を彩った季節の恵みに舌鼓を打っていた▼ジビエは育成校の講師の知人を通じて手配され、地元で食堂に勤める方が調理を担当した。シカ肉の刺し身の味付け、クマ肉の部位ごとの焼き方などを丁寧に教えてくれた。「また来てね」との声に「また来ます」と応じた生徒の笑顔が、心に残った▼この取り組みは、注目を集める二地域居住に関連した「二拠点教育」の一環。初めて訪れた土地で建設技術を学びながら、自然と共にある暮らしや地域文化に触れることを目的としている▼生徒の希望に応える形で実現し、国土交通省や厚生労働省、建設業振興基金の支援と協力を得た。同行した教員は「これまで見えていた景色が変わっていく」と語り、感謝の気持ちを伝えた▼現地には他校の関係者も休暇を取り自費で視察に訪れていた。建設業の未来を見据え、若者の学びを支える輪が、静かに広がり始めている。