大豊建設は、女性技術者が現場で安心して働ける環境づくりを後押ししている。具体的なアドバイスや先輩社員の体験をまとめたリーフレットを初めて制作。4月に発足した女性社員9人で構成するダイバーシティ推進委員会が中心になり、主に初めて現場に赴く若手社員を想定し、不安の軽減につながる知恵や工夫を盛り込んだ内容になっている。
発案者は東京建築支店積算部の高井彩芽さん。「現場で女性技術者が増える中、しっかりとフォローし、長く働き続けられるような環境づくりにつなげたい」と思いを語る。リーフレットはA4判で2部構成。口語調を取り入れ、柔らかな表現を心がけた。
8月までに新入社員5人を含む女性技術者38人に配布した。受け取った新入社員からは「とても元気が出た」「女性ならではの不安にも触れていてありがたい」といった前向きな声があった。今後は就職活動をしている学生への配布も視野に入れている。
第1部は「困ったときに役立つアドバイス」。高井さんをはじめとする現場経験者の体験や、後輩からの相談を基に内容を構成した。便利グッズの紹介や季節ごとの天候対策、生理休暇の取得手順といった実務的な情報に加え、プライベートな質問をかわすこつや、透けにくい下着の選び方など細やかな気配りも盛り込んだ。
さらに、「男性が多い現場では良くも悪くも目立つ存在になりがち。うわさの的にならぬよう、行動には意識を持とう」といった助言も添えている。
第2部は、現場で活躍する20~30代の女性技術者と、現場経験を経て内勤に異動した先輩社員、計9人の働き方やアドバイスを紹介している。中には産休・育休後に復帰した社員の事例も掲載。「身近なロールモデルを見つけてほしい」との願いを込めた。
高井さんは入社10年目。初めて現場に配属された時は、近くに同性の先輩がいなかったことから、相談のしづらさを感じていたという。「技術職は他の女性社員との接点が少なく、つながるまでに時間がかかる。今回のリーフレットはほんの小さな一歩だが、これをきっかけに、誰もが働きやすい職場づくりにつながれば」と今後に期待する。
「女性の部下を持つ男性所長からも『自分にも欲しい』という声が届いている」と話すのは、管理本部総務部広報課の幡井千穂課長補佐。「女性が働きやすい職場は、男性にとっても働きやすい場所。ダイバーシティー(多様性)の実現に向け、まずは女性技術者が増えていくことが重要」と先を見据える。
釘本実取締役兼常務執行役員管理本部長も「現場ならではの不安や疑問を解消するツールとして、男性にとっても役立つ視点が詰まっている。相互理解を深め、協力し合える職場環境づくりの一助になるはずだ」と推進委らの活動成果を評価している。
リーフレットは、現場のリアルな声に耳を傾け、丁寧にまとめられた実用的なツールであると同時に、職場での多様性と支え合いの文化を育む第一歩になる。同社のダイバーシティー推進の「取り組みは、今後さらに広がりを見せそうだ。