近くの神社で大きく枝を広げたカヤの木がたくさんの実を付けている。その一つが足元にポトンと落ち、これも何かの御利益かと手に取り観察した▼カヤは9月下旬~10月ごろに実を落とす。種子が食用や薬用などに重宝され、優れた木材としての性質も持つ。寿命が長く大木となる特徴からか信仰の対象にもなってきた▼神社や寺には、繁栄や再生を象徴する生命力の強い樹木がある。カヤなどとともによく見られるのがイチョウ。切り株から新しい芽が育ち、火事で幹が焼けても再生したとの話も伝えられる▼イチョウは氷河期に中国南部を除き消滅してしまう。日本にも生息しなくなったが、平安~鎌倉時代に中国から伝来し広まったとされる。17世紀末に訪日したドイツ人医師がイチョウを欧州に紹介すると、それまで絶滅したと考えられていたために植物学者が驚嘆したという(渡部一夫著『公園・神社の樹木』)▼気象庁の予報では10月の気温も全国的に高い。残暑の影響でイチョウの葉が黄金色に染まる見頃は平年より遅くなるのだろうか。絶滅の危機にひんするも生き残った木が放つ輝きは、今年もきっと美しい。