回転窓/PFIで問われる公共文化の在り方

2025年10月2日 論説・コラム [1面]

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 日本芸術文化振興会が7月に公表した「芸術鑑賞の習慣化についての実態調査」によると、映画や軽音楽など娯楽性の高い芸術を楽しむ人は全体の55%。一方で、歌舞伎や能・狂言、クラシック音楽といった「正統性の高い芸術」を習慣的に鑑賞する人は15%にとどまった▼この15%は年齢層による偏りが少なく、「一度習慣になれば、生涯の趣味になる」傾向があるという。調査では、正統芸術の裾野を広げるには若年層への働き掛けが不可欠と分析していた▼そうした中、東京都千代田区にある国立劇場の再整備方針が先頃、公表された。PFI方式による整備を計画し、民間との対話を経て年度内の入札公告を予定する▼これまで入札は2度不調となり、工事費の見直しも行われてきた。整備への期待が膨らむ一方で、運営の在り方を巡っては「PFIにこだわる必要はあるのか」との疑問も政府内でくすぶる▼PFIは費用を長期にわたり分割して支払える仕組みが利点だが、法が掲げる「効率的かつ効果的」な社会資本整備の理念にかなうのか。正統芸術の担い手を育てる土壌づくりとしても、再整備の進展を注視したい。