山口県が計画する木屋川ダム(下関市)の再開発事業に向けて、県と下関、長門両市の地権者協議会が9日、損失補償に関する協定を締結した。沿川地域の浸水被害の軽減と流水の正常な機能の維持を目的に既設のダム堤体をかさ上げするもので、今後は地権者と個別協議に入る。当初のかさ上げ計画発表から50年以上経過したが、再開発事業が大きく前進する。
調印式は下関市豊田町の市林業総合センターで行われ、山口県土木建築部の仙石克洋部長、三豊地区地権者協議会(下関市)の増野憲友会長と俵山地区地権者協議会(長門市)の中原純二会長が出席。下関市の前田晋太郎市長と長門市の江原達也市長が立ち会い、損失補償基準の協定書に調印した。
補償基準は土地取得の基準単価や建物・工作物の移転料、立木類の補償、移転に伴い必要となる経費など損失補償に関する基本的事項を定めたもので、協定書は協議会と県との合意の証として交わした。用地買収の対象は宅地や田畑、山林など約110ヘクタール。補償対象は約20世帯。
県西部を流れる木屋川水系にある木屋川ダムは洪水調節や流水の機能維持、水道用水と工業用水の供給のほか、発電にも利用する重力式コンクリートダム。堤高は41メートル、堤頂長が174・3メートル。総貯水量は2175万立方メートル。
1955年に完成し、沿川地域の浸水被害を軽減しているが、近年は下流域でたびたび浸水被害が発生しており、既設のダムをかさ上げすることで被害を減らす。
再開発事業でダム本体下流側にコンクリートを打設し、堤高を10メートルかさ上げする。堤頂長は237メートルに延ばし、堤体積は既存の8万4500立方メートルが15万立方メートルに増える。総貯水量は3835万立方メートル。洪水調節容量は現在の900万立方メートルから1750万立方メートルに増加する。県道と市道の付け替えは計14キロを予定している。総事業費は約400億円。2039年度の完成を目指す。
仙石部長は「事業が大きく前進できる。今後、円滑な事業の推進に努め、移転者の生活再建や要望などを踏まえた地域整備に誠意を持って取り組む」と村岡嗣政知事のメッセージを読み上げた。