回転窓/創業150年の現実に目を

2025年10月16日 論説・コラム [1面]

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 空港行きの列車に電子機器を置き忘れた友人が、帰国後に鉄道会社から「見つかった」との連絡を受け、喜んでいた。車内にはなかったが、折り返し先の駅に届けてくれた人がいたという▼鉄道各社の落とし物検索サービスの充実ぶりに驚かされる。落とし物やなくし物の情報とともに写真データを登録できる会社もあり、その恩恵にあずかった人も少なくないだろう▼鉄道の日の10月14日、今年は新橋~横浜間の初の鉄道走行を記念する多くの事業が行われた。国土交通省は32回目となる鉄道関係功労者表彰で、「鉄道関係事業の特別功労関係」として鉄道百五十年史編集委員会を選んだ▼年史は、わが国の鉄道創業から150年目となる2022年に、国内初の総合鉄道史として刊行された。国交省は「鉄道を巡る国民活動の知的基盤の構築」を理由に挙げ、関係者の功績をたたえた▼鉄道会社からはデジタル技術を生かした豊富なサービスが提供され、整備中や計画中の新路線も複数ある。ただ地方に目を向けると、廃線や路線維持の議論が紛糾する地域もある。鉄道の恩恵と課題、その両方にこれからも、しっかり目を向け続けたい。