回転窓/ぷちぷちが教えてくれる発想の力

2025年12月4日 論説・コラム [1面]

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 ぷちぷちぷち--見かけると、ついつい指でつぶしたくなる気泡緩衝材。その用途は幅広く、大切な物を守るだけでなく、例えばアウトドアでは、断熱材や包帯代わりにも使えるという▼つぶす時のほどよい弾力や弾ける音の心地よさ。ある時、小学生が遊んでいた人気の携帯ゲーム機を離し、気泡緩衝材に夢中だった幼児に駆け寄る姿を見て、その魅力にあらためて感心した▼芝浦工業大学と東京都市大学の研究チームが、この破裂音を利用して管路内の異物を検知するシステムを開発したと聞いた。破裂音の周波数成分には再現性があり、非破壊検査で高価な音源装置の代替になるそうだ▼厚さを調整して破裂音の強度や方向を制御し、解析技術と組み合わせることで、異物の位置が精度良く特定できた。欠陥や異常検出にも対応できるよう改良していく予定だそうだ▼関係者によると、この研究は「ついぷちっとつぶす」という身近な行為に着想を得て始まった。「素材の中に社会を支える技術のヒントがある」との声も。ぷちっと弾ける一瞬の音が、社会に役立つ次の技術を呼び込み、どこまで広がるのか静かに見守りたい。