回転窓/「BUSHIDO」に学ぶ

2025年10月20日 論説・コラム [1面]

文字サイズ

 カナダのブリティッシュコロンビア州の州都ビクトリアは「花の都」と呼ばれ、多くの観光客でにぎわう。この市と日本の盛岡市が姉妹都市となり今年で40周年を迎えた▼盛岡に生まれ育ち、教育や農業振興、国際平和活動に尽力した新渡戸稲造(1862~1933年)の終焉(えん)の地がビクトリア。こうした縁から、両市は85年に姉妹都市提携を結んだ▼新渡戸の代表的な著書『武士道』は、日本人の精神文化を世界に広く紹介した。『現代語訳 武士道』(ちくま新書)の訳者・山本博文氏は「日本人が外国人に向けて書いた初めての日本文化論」であり、武士道の解説だけでなく「日本人の拠(よ)って立つ道徳意識や思考方法を明らかにしている」と書いている▼満州事変で悪化した日米関係の改善などに努めた新渡戸の没後、日本は太平洋戦争へと突入する。世界にいまだ戦火が絶えない中、かつて国際社会の調整に奔走した偉人の功績をたどる意義は大きい▼米国で刊行された初版『武士道』のタイトルは『BUSHIDO~The Soul of Japan』。大切にしたい〈日本人の魂〉とは何かが分かる。