国土交通省は「地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)」を支える要素として「事業者の束」をつくる有効性を発信する。今月公表した群マネの手引で、維持管理業務・工事を手がける受注者の連携体制としてJVや事業協同組合を例示=図参照。先行的に導入する地方自治体の事例を踏まえ、地域建設業の経営安定化と体制確保につながるメリットを訴える。民間の創意工夫の発揮を促す契約上のインセンティブの検討にも今後乗り出す。
手引では群マネの実施プロセスの一環で「事業者とのコミュニケーション」の取り方を解説する。事業検討の初期段階は誰でも参加可能なオープンな勉強会などで事業者側の機運醸成や不安除去に役立てることなどを提案。詳細な検討が進んだ段階で個別ヒアリングやアンケートに切り替え直接意向を確認したり、災害訓練なども事業者と対話する場として活用したりするなど、先行事例で有効だった方策を紹介する。
地元企業の参画を促すため、先行事例では包括発注に当たって地域要件を設定し、域内企業だけのJVを構成するケースが多い。構成員間で特殊車両や機材を融通し、作業を効率化している秋田県大館市の例がある。静岡県と下田市は道路管理を同一のJVに共同発注している。県道と市道を区別せずに対応できるメリットがあり、広域連携と事業者連携を組み合わせた群マネの実践例となる。
一方、地元企業だけで全体のマネジメントが難しい場合、高度なノウハウを持つ域外企業が一部参画することも有効だ。三重県明和町は道路と公園の包括管理業務を町外の大手企業に委託。町内企業が「業務委託費の50%以上を履行する」ルールを公募時の要件とし、町内企業への業務再委託を担保している。地元企業でJV組成への準備が整っていないケースなどで選択肢の一つになりそうだ。
事業協同組合への包括委託は、栃木県と福島県の例を紹介。既に広域連携や事業者連携の素地があり、さらなる広域化や分野間連携への発展も期待できる。
契約上のインセンティブは、有識者会議で手引の「Ver.2」を検討する際にテーマの一つにする。先行例として東京都府中市は、道路管理の受託企業が市民からの通報に先回りして異常を発見した割合を指標化し、次回調達で加点する制度を導入している。民間のノウハウ発揮と利益増大につながる性能発注の在り方を掘り下げ、制度的対応の必要性などを検討する。