NTT、産総研/陥没リスクの早期検知可能に/地盤モニタリング技術を開発

2025年10月22日 技術・商品 [1面]

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 NTTと産業技術総合研究所(産総研)は21日、光ファイバーを使った地盤モニタリング技術を開発したと発表した。これまで探査が難しかった地下3~30メートルの地盤が遠隔調査でき、空洞発生リスクを早期検出することが可能になる。実証実験で地盤特性変化の把握と空洞形成の予兆を推定することに成功した。自治体や上下水道事業者と連携し、2026年度に実際の都市環境で実証実験を行う予定だ。
 開発したのは、光ファイバーを通る信号の微細なブレを検知し、周辺地盤の変化を推定する技術。NTTが独自開発した高精度分布音響センシング(DAS)技術を使って、交通や気象で地盤に起こる体に感じない微細な揺れ(常時微動)を捉える。常時微動を経年で観測し、データの変化から地盤内の空洞など異常発生を推定する。空洞ができると、地盤と空洞で振動伝播(でんぱ)の速度差が検知できる。
 7~9月に茨城県つくば市と埼玉県草加市で実証実験を実施し実用性を確認した。
 新技術は、最大30メートルまでの地下深部を1日1回程度の高い頻度で調査できる。DAS技術の導入でNTTが全国に張り巡らせた約62万キロの地下光ファイバー網だけでなく、NTT以外の光ファイバー網もモニタリングに活用できる。
 両者は、解析アルゴリズムや検知システムの高度化をさらに進め、インフラ監視や防災システムへの適用を目指す。衛星によるリモートセンシング技術との組み合わせで、さらに広範囲、高精度なリスク把握もできる。
 1月に発生した埼玉県八潮市の大規模陥没事故では、地下3メートル以深の場所に発生する空洞検知が難しいことを浮き彫りにした。地下深い場所の地盤構造把握が可能な微動アレイ探査は高頻度での調査が難しく、空洞発生の早期発見に課題があった。新技術の活用によって高頻度、広範囲での地中モニタリング技術の確立につながると期待される。