回転窓/「あくび」の教え

2025年10月27日 論説・コラム [1面]

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 眠いときなどに出る「あくび」には四季折々の種類があるらしい。古典落語が好きな方ならお分かりだろう。人気の演目「あくび指南」で、江戸っ子の熊公はあくび指南処(どころ)に行き、師匠から季節ごとのあくびを教えてもらう▼例えば夏は川で舟遊びに興じるうちに退屈となり出るあくび。秋は名月を見ながら出るあくび。はなし家の見事な話芸でそれぞれの情景が目に浮かんできて面白い▼秋は春とともに眠気を誘う季節でもある。寒暖差が大きいと自律神経が乱れ、眠気やだるさが生じやすい。寝不足でないのに何度もあくびが出るのは、体調悪化のサインかもしれない▼時と場合によってはあくびも不謹慎で失礼な行為とされてしまう。政策審議中に大きなあくびをする議員が写真や映像に撮られ、批判を浴びることも。必要な政策を実施してくれるなら、審議に疲れて出るあくびの一つや二つは大目に見られてもいい。あくびには緊張やストレスの緩和効果もある▼さて、落語の「あくび指南」で熊公より器用にあくびができたのは誰か…。指南を受けるまでもなく、意識せず普通に出るあくびに勝るものはない。