広島市は10月30日、老朽化した広島城天守の復元に関する検討会議(座長・三浦正幸広島大学名誉教授)を開き、小天守を含む天守群の復元図を示した。小天守はかつて大天守の東と南にあったが、明治期に取り壊されており、指図や絵図に加え、古写真を解析して寸法などを検討した。工事費は東側から資材を搬入する場合が178億2000万円(税込み)、北側の堀を横断する場合が194億7000万円(同)と試算。設計などを除く工期は9年を見込んだ。
 大天守の復元図を初めて示した前回会議での指摘事項を踏まえ、図面を修正した。東小天守は各階平面図の規模を想定しながら軒高の解析を行い、立面を検討した。南小天守は復元根拠が乏しく、東小天守と線対称の位置にあることを踏まえ、平面や屋根の形式などを想定した。
 資材の搬入は裏御門から腰曲輪を通るルートと内堀北側から堀を横断するルートの2案を提示。全てを木造で復元する場合、約1400立方メートルの木材が必要とし、現場付近に保管庫と加工場を設けるとした。全天候型で作業ができるよう素屋根を架設し、展示施設や見学施設を設置することも検討する。
 このほか、消防法やバリアフリー対応、基礎地盤の液状化対策、耐震・耐風性能に関する検討結果なども示した。
 具体化に向けた技術的課題も示し、仮設計画は構台や素屋根の基礎設置範囲の地盤耐力、遺構の有無など詳細な調査が必要とし、建築基準法や消防法など関連法令への対応では所管部署と協議を重ねる。エレベーターの設置が難しい部分にも昇降設備を検討するとしている。
 三浦座長は「大天守と取り壊された小天守を加えた広島城の本来の価値を復元できる。今回で目指すべき天守の形が分かった。今後は実現に向けてバリアフリーを含めて検討したい」と話した。
 広島城の天守は原爆で倒壊し、1958年にRC造5階建てで再建した。築65年以上が経過し、老朽化が進んでいる。耐震診断の結果、震度6強程度の地震で倒壊の可能性があると診断された。2026年3月22日に閉城が決まっている。
        




        
        
        
        





