国交省/労務費・賃金の実態把握/試行参画促進へ、受注者に丁寧に説明

2025年11月5日 行政・団体 [2面]

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 国土交通省が直轄土木工事で今月中旬に開始する労務費や技能者賃金の実態を把握する試行では、受注者に日報入力や契約書の提出などの対応を求める。直接の契約関係にある元請だけでなく、下請にも契約書や技能者の賃金情報の提出に協力してもらう。試行対象工事では労務費と賃金の適正さを判断する「達成率」を算出するが、当面は何らかのインセンティブやペナルティーは設けない。国交省は試行への積極的な参画を促すため、その目的などを「受注者に丁寧に説明する」(官房技術調査課)考えだ。=1面参照
 試行の実施は、鉄筋や型枠といった工種ごとを基本とする。下請を含む受注者には、▽日報入力▽契約書▽賃金情報-の三つのデータの提出を求める。日報は技能者ごとの実労働時間を把握できる様式を用意してもらう。契約書は材工分離で記載され、工種別の労務費が把握できることを前提とする。賃金情報は技能者を雇用する下請などが、元請を介さず発注者に直接提出する。これらの書類提出の手間を軽減するため、施工管理ソフトウエアから出力できる機能の実装に向けソフトベンダーの業界団体とも調整している。
 各データを発注者で処理し、労務費と賃金のそれぞれで「達成率」を算出する流れとなる。労務費の達成率は、公共工事設計労務単価をベースとした時間給を支払えるだけの労務費が確保された場合を100%とみなす。施工の工夫で生産性を向上させ、実労働時間を縮減すれば達成率も上がる仕掛けだ。賃金の達成率は、技能者の平均賃金が設計労務単価相当であれば100%とする。
 こうした算定結果は工事完了後、受注者に通知する。試行を実施した工種を対象に、予定価格の積算で見込んでいた作業時間も参考として受注者に開示する。官積算で見込む作業時間と、現場で実際に要した作業時間を比較し、どの程度の差があるか受発注者双方が把握できることになる。こうした実態把握の結果を適正な労務費の確保や施工の効率化に生かすことを想定する。