東北整備局北上川下流/流量観測省力化へ/河川調査の新技術公開

2025年11月18日 技術・商品 [6面]

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 気候変動の影響で変化する治水対策で、流量観測の自動化に向けた新技術の導入が広がっている。東北地方整備局北上川下流河川事務所は、宮城県大崎市や大和町を流れる1級河川鳴瀬川水系吉田川で試行中の「画像解析流量観測」をはじめADCP(超音波式多層流向流速計)を用いた低水流量観測などの新技術を公開した。赤外線カメラと高感度カメラによる流量観測の結果、高精度のデータが得られることを確認。東北整備局管内では本年度に鳴瀬川、阿武隈川など5河川12観測所で非接触流量観測機器を実装する計画を進めている。
 流量観測は河川計画や設計上、重要なデータとなる。新たな技術開発や活用ヘの期待が高まる中、北上川下流河川事務所では若手技術者や河川管理業務に関わるコンサルタント、メーカーから約40人が参加して14日、吉田川河川敷(宮城県大和町)で流量観測講習会を実施した。
 一般的に流量観測は、GPS(衛星利用測位システム)装置と発信器を内蔵した浮子を川に投入して、そこから得る数値を基に把握する手法が用いられている。豪雨や大雨による道路冠水で現場に到達できないなどのケースも珍しくなく、危険が伴う現場では計測者の担い手不足という深刻な課題も抱えている。北上川下流河川事務所では、画像解析法量観測を落合観測所に試行的に導入し、従来の浮子観測と精度を検証。流量比は10%以内であることを確認した。今後も併用観測を積み重ね、画像解析に順次切り替えていく。
 徒歩や舟、橋上で行われる低水流量観測の場合も危険が伴い、川幅が広い地点での観測には時間も要する。そこでDX推進を背景にADCPの活用に注目。現地ではラジコン式ADCP流速計や深浅測量を紹介した。ADCPには高性能GNSS(全球測位衛星システム)受信機を内蔵し、最低水深20センチから計測できるという。
 このほか、避難指示が発出される大規模出水時の代替策として、自動浮子投下装置や電波流速計も紹介した。橋梁高欄に自動投下装置を取り付けることで安全な場所から遠隔操作でGNSS装着浮子を投下し、基地局(社内)と結ぶことでリアルタイムにデータを収集できる。
 北上川下流河川事務所防災情報課の及川加奈建設専門官は「流量観測は危険が伴う。安全で確実な観測を行うためにも最新式の技術に官民で取り組んでいくことが大切だ」と語った。