国交省調査/7府県が下請次数制限/品質確保や労働条件改善で効果期待

2025年11月26日 行政・団体 [1面]

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 国土交通省は、重層下請構造の非効率性や弊害を是正するため下請次数を制限している都道府県の最新動向をまとめた。次数制限は7団体で実施しており、7月に試行を開始したばかりの徳島県のような直近の導入例もある。建築一式工事で3次以内、ほかの土木一式工事などで2次以内とするケースが多い。発注者として施工責任の明確化による品質確保や、下請の労働条件悪化の防止を期待する。専門の職人や機材を抱えた地域業者の保護・育成を狙いとする取り組みもある。
 国交省が今月までに都道府県・政令市に行ったアンケートで、▽三重▽福井▽京都▽鳥取▽徳島▽和歌山▽長崎-の7府県が次数制限を設けていると回答した=表参照。過去10年以上、取り組みを継続している団体も複数ある。
 制限する次数の範囲は、受注者のヒアリングや工事実績を踏まえて設定しており、あくまで過度な重層化を防ぐことが狙いとなる。通常より専門性が高いなど適用が困難な工事では理由書を出してもらい、制限を超えた重層化を許容する柔軟な対応も多い。
 和歌山県は一式工事から分離した専門工事の発注で下請次数を1次までに制限し、専門工事業者が元請として受注する機会を確保しやすくしている。長崎県は総合評価方式で「適切な下請契約」を評価し、制限範囲内の次数を誓約すれば加点している。
 重層構造を巡っては、生産性の低下や労務費へのしわ寄せなどの弊害が指摘されている。次数制限の導入団体からは発注者の目線から「指揮系統が煩雑になり、施工責任があいまいになる」(福井県)と懸念する声がある。
 12月12日に施行する改正建設業法で労務費や材料費、必要経費の切り下げが許容されない環境になれば、中抜きが難しくなり重層構造の解消に作用するとの見方がある。重層構造は建設業者の細分化につながる面があり、国交省も技術者・技能者の教育や適切な配置といった「人的資源の在り方をより困難にしている側面も否定できない」と問題視する。