国土交通省は、都道府県・政令市発注工事で技能者の賃金支払いを確認している事例を調査した。個別工事の入札で適用するオープンブック方式や低入札価格調査制度、公契約条例に基づき受注者に労務賃金の関資料で提出を求めるなど、全67団体のうち16団体が確認に当たっていた。改正建設業法で規定する「労務費に関する基準(標準労務費)」は、最終的な賃金支払いをグリップする仕組みがあってこそ処遇改善に効果を発揮する。各団体によるさまざまな確認手法は、標準労務費の実効性確保のモデルケースとも言えそうだ。
宮城県は工事入札で適用している「施工体制事前提出方式(オープンブック方式)」で、落札候補者に下請も含めた工事費内訳書や労務賃金調書の提示を求めている。公契約条例を導入する相模原市は一定額以上の工事で労働状況台帳の提出を求め、あらかじめ設定した労働報酬下限額を実際の賃金が下回っていないかどうか確認している。
低入調査の実施対象となった受注者に、賃金支払いの書類を求める団体もある。堺市は、調査時に適正賃金の確保を確認する書類を出してもらい、工事完了後の支払い状況報告書と見比べている。岡山市は工事完了後、下請に支払った際の領収書の写しの提出を求めている。広島県は低入札工事や発注者が指定した工事で、完了後に下請との契約書や請求書、支払い状況が分かる資料を提出してもらっている。
発注工事の下請契約や従事した労働者を一定程度抽出し、調査を行うケースもある。新潟市は、公共工事設計労務単価と実際に支払われた賃金の平均額を比較するサンプル調査を2011年度から実施する。鳥取県は年500件程度の下請契約を調査対象とし、官積算を下回るような契約額の場合、元請と下請のヒアリングなどで技能者の賃金水準を確認し必要な助言・指導を行っている。
一方、以前は賃金支払いを確認していたが、23年度に廃止した長崎県の例もある。多くの下請が関わる建築工事などで事務負担が過大だったことが廃止の理由だ。同じように受発注者双方の事務負担や、人員体制の確保の難しさを懸念する団体も多く、確認に踏み出せない要因となっている。






