23日に千秋楽を迎えた大相撲九州場所は最終盤でまさかの展開が続き、新関脇で臨んだ安青錦が初めて賜杯を抱いた。優勝決定戦で両手両膝をついた横綱豊昇龍の姿に勝負の世界の厳しさを感じながら、改めてその魅力を再確認した方も多かろう▼ウクライナ出身では初の大関が誕生。26日の伝達式で「大関の名に恥じぬよう、さらに上を目指して精進します」と口上を述べた。シンプルな言葉だからこそ、純粋な思いが伝わった▼ロシアによる母国への軍事侵攻を受け、2022年4月に来日。安治川部屋に入門後、戦火が続くウクライナには帰省していない。「帰りたい気持ちはある。友達と会いたい。自分の街で散歩したい」。故郷への思いは心にある▼初優勝後、ドイツに住む両親と電話で話した。涙を流して喜んでくれたという。母国に関して多くを語らないが、胸に秘めた望郷の思いは出世への意欲、角界で生き抜く覚悟につながっているのだろう▼日本や大相撲の文化をひたむきに学び、己や技を磨いてきた21歳がウクライナに吉報を届けた。建設産業界も災害現場など磨いた技術と知見で復興を支えられるはずだ。







