政府が2028年度の開始を目指す建築物のライフ・サイクル・カーボン(LCC)評価を促す新たな制度の詳細が固まった。建設から維持管理、解体までのライフサイクル全体の二酸化炭素(CO2)排出量の算定を建築主などに求める。制度開始当初は延べ5000平方メートル以上のオフィスビルの新築・増改築を対象に、着工14日前までにLCC評価結果の国土交通省への届け出を義務付ける方向だ。評価結果が著しく不十分な場合、建築主を国が勧告する仕組みを設けることも検討する。
社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)建築分科会・建築環境部会の12日の会合で国交省が説明した。制度内容をまとめた同部会の報告書を26年1月に決定。国交省による制度具体化に移る。
新制度ではLCCの算定・評価に規制措置を設けつつ、自主的な削減の検討を促す。LCC評価の届け出は着工前に限定。着工後の数量変更などに伴う再評価や竣工後の達成は求めない。届け出対象より広い範囲で、建築士(設計者)が着工前にLCC評価結果を建築主に説明する義務も課す。当面は延べ2000平方メートル以上の非住宅建築物の新築・増改築を対象とする。特に基本計画や基本設計など初期段階で、既存躯体の再利用や低炭素・長寿命化建材の活用など、LCC削減に効果的な方策を提案することを期待する。
LCC評価結果の第三者認証・表示制度を立ち上げ、脱炭素に取り組んだ建築物をアピール可能な環境を構築。LCC削減を促すためのデータや事例の蓄積、好事例の水平展開にも取り組む。国がLCC削減のパイロット事業を支援したり、建築物整備に関する補助事業でLCC評価を先行的に要件化したりすることを検討する。制度運用やデータ蓄積の状況を踏まえ3年以内に届け出対象の見直しに着手し、5年以内に対象用途・規模を拡充する。
新制度の開始を見据え、建材・設備のCO2原単位の整備方針も示す。LCC評価への影響度を踏まえデータ整備の優先順位を付け、建材・設備メーカーなどに対応を促す。主に躯体に用いる鉄鋼材料やコンクリート、木材は最優先とし、27年度までの整備を原則とする。内外装に用いるアルミサッシやガラス、OAフロア、石こうボードなども優先的に整備する。








