国交省、改正業法施行で説明会スタート/「賃金原資は競争外」認識を

2025年12月19日 行政・団体 [1面]

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 12日に全面施行を迎えた改正建設業法の説明会がスタートした。「労務費に関する基準(標準労務費)」に基づく新たな取引ルールを解説し、建設業者と官民の発注者の双方に責任ある行動を呼び掛ける。18日に東京都内で開かれた初回の会合=写真=で、国土交通省は「労働者に払う賃金の原資は競争の対象にしない」という認識の共有を要請。安価な発注が社内で評価されるなどの旧来の風潮を改める必要があり、受発注者双方の現場社員や調達担当者も含めて新ルールの実践を徹底するよう参加者らに協力を求めた。
 説明会では中央建設業審議会(中建審)が2日勧告した標準労務費と、その実効性確保策の詳細を周知する。勧告文書は標準労務費の基本的な考え方を示す内容で、鉄筋や型枠など工種別の具体的な数値は国交省が別途設定する仕組みだ。特定の金額を示して順守を求めるのではなく、個々の現場ごとに応用できる適正な労務費の計算方法を示し、これに基づく見積もりや価格交渉を促進するのが狙いとなる。
 国交省は、契約前の交渉過程で労務費や経費の必要額を確保する商慣行をサプライチェーン(供給網)全体でつくる必要性を説く。「賃金の原資を確保しようとする会社にとって価格交渉の『武器』となるものと理解してほしい」と訴えた。一方、あくまで価格交渉時のルールであり「請負契約としての性質は変わらない」とし、契約後に生じた実費との差額の精算を求める仕組みではないと説明した。
 標準労務費に率先して対応する企業が競争上不利にならないよう、実効性確保策の重要性も強調する。技能者の処遇改善に取り組む企業を可視化し評価する「自主宣言制度」や、契約当事者間で労務費・賃金の支払いを約束する「コミットメント」制度などを法施行と同時に導入。コミットメントで自社が支払った労務費の行き渡りが確認可能となり、注文者の立場でも株主や議会などへの説明責任やコンプライアンスの面でメリットがあるとした。
 説明会は18日の関東地区を皮切りに、2026年2月まで全国10ブロックを巡回する。