西松建設は共同住宅建設の生産性向上策として、鉛直スリット不要の袖壁付きRC柱部材「スマートスリット構法」を開発した。部材に目地を設け、水平スリットだけを採用して従来の鉛直スリット併用時と同等の耐震性を確保する。15階建ての共同住宅で試設計したところ、鉛直スリットが必要な複雑形状の袖壁付きRC柱を除き、建物全体の鉛直スリットを約50%削減。現場作業を大幅に効率・省力化する同構法を積極提案していく。
スマートスリット構法は、秋田県立大学の西田哲也、菅野秀人両教授と日本大学の高橋孝二教授の指導を受け開発した。日本建築総合試験所から建築技術性能証明を取得した。
一般的な袖壁付きRC柱部材は、袖壁と柱の間に鉛直スリット、袖壁脚部と梁の間に水平スリットを設け、地震発生時にはスリットで設けられた隙間が揺れの力を分散させる。施工には多くの時間と工程、人員を必要とし、複数の目視検査や検査記録表の作成も必要とする。
そこで建物の耐震安全性の確保を最優先してスリット使用が減らせる構法を研究してきたところ、水平スリットだけを使用するスマートスリット構法を開発した。
スマートスリット構法による施工ではまず袖壁と柱の間に目地を設ける。袖壁内の鉄筋のうち、縦方向の鉄筋は上階の梁の中に定着する。横方向の鉄筋は振れ止め筋を除き目地があるため、柱には定着しない構造になる。目地の形成も含め従来のRC造の施工手順とほとんど変わらずに作業できる。
構造実験では解析検討を繰り返し実施。一般的な設計で想定される約4倍の変形状態に至っても建物に脆(ぜい)性的な破壊は生じないことを確認した。








