東京都が「豪雨対策基本方針」を策定するきっかけとなった2005年9月豪雨から今年で20年が経過した。杉並区や中野区などを流れる妙正寺川や善福寺川の上流部を中心に1時間当たり最大100ミリ以上の降雨が発生。2区を中心に約6000棟が浸水被害を受けた。07年の基本方針策定後はこれまでに2回改定。安全・安心なまちの実現に向け、模索が続く。
05年9月4日、日本上空で停滞中の前線に台風14号が南東方向から接近。暖かく湿った空気が関東地方上空に流れ込み、積乱雲を誘発した。都内では昼過ぎから続いた雷雨が、日暮れごろに激しくなり、4日夜から5日未明にかけて局地的な大雨に見舞われた。
1時間当たりの最大雨量は下井草観測所(杉並区)で112ミリ、石神井観測所(練馬区)で109ミリ、鷺ノ宮観測所(中野区)で104ミリを記録。妙正寺川、善福寺川など8河川の流域で洪水が発生した。
都は1時間当たり50ミリの降雨に対処できるよう、河川や下水道の整備を推進してきた。並行して調節池の建設や流域で雨水流出抑制施設の設置も進めた。
07年8月に策定した最初の「豪雨対策基本方針」は、1時間当たり50ミリ降雨までは川で流下し、プラス25ミリは貯留施設にためる方向を示した。さらにプラス10ミリ程度は流域対策を視野に入れた。「まずは50ミリの流下能力を確保するために川幅の拡大や川底の掘削、護岸をかさ上げするなどの工事を進めた。工事が難しい場合は貯留施設の設置と組み合わせながら治水対策に取り組んだ」(都担当者)。
その後、08年、10年、13年に1時間当たり100ミリ超の降雨が続発。それぞれ数百棟が浸水し、深刻な被害を受けた。07年に基本方針を策定した時には100ミリの降雨がここまで頻発化することは想定していなかったという。
14年6月に基本方針を改定。目標降雨を1時間当たり区部で75ミリ、多摩部は65ミリに設定した。50ミリまでは川で流下し、プラス15~25ミリは調節池で対応。流域対策も明確に打ち出した。
その後23年12月に行った改定の背景にあったのは気候変動の脅威だ。同3月に開かれた気候変動に関する政府間パネル(IPCC)では将来の気温上昇の切迫性が改めて示された。降雨量の増加や台風の強大化に備え、目標降雨を都内全域でプラス10ミリに設定。区部は85ミリ、多摩部で75ミリに対応する。
小池百合子知事は改定前の同10月の会見で「引き上げた目標降雨量は主に地下河川や雨水の調整池などで対応する。公共施設や住宅の敷地内に設置する雨水浸透施設も増やし、浸水被害を防ぐ」と具体策を説明した。
都の担当者は「公共だけでなく民間企業、都民も現状を踏まえ、将来の高まるリスクに備えないといけない」と話す。今後さらなる激甚化が予想される水害。官民が一丸となった流域対策が被害低減の鍵を握る。








