中部地方整備局静岡河川事務所は、静岡県焼津市田尻の海岸堤防補強工事に建設用3Dプリンターを活用している。地中に障害物があり擁壁施工のための矢板土留め掘削ができない現場の課題を踏まえ、埋設型枠工法を採用。3Dプリンターで埋設型枠ブロックを造形し、従来の型枠工法と比較して工期を58%短縮できる見込みだ。
現場は「令和7年度駿河海岸焼津工区田尻堤防補強工事」。粘り強い構造の海岸堤防を整備する。工事延長は約103メートル(コンクリートブロック区間43メートル、もたれ擁壁区間59メートル)。施工は特種東海フォレストが担当。8月に着工し2026年3月までの工期で進めている。このうち3Dプリンターを採用しているもたれ擁壁区間は高さ約4・3メートル、下幅は約1・8メートル、上幅は約0・6メートルの擁壁を構築する。
3Dプリンターで造形する型枠ブロックは188個使用する予定で、1個当たりの大きさ(代表部材)は縦1・6メートル、横1・2メートル、高さ1・3メートル。重さは約1トン。2~4時間程度で造形する。
現場の既設堤防内には地中障害物(旧堤防のコンクリート)があるため、擁壁施工のための土留めの矢板を打ち込むことができない。このため採用した埋設型枠工法では3Dプリンターを活用。プレキャスト製品では困難だった自由な造形に対応し、現場条件に合致した構造物を製造できる。該当部分の工期は、型枠工程を省くことができるため約50日から約21日に短縮できる予定だ。危険作業の低減など安全性の向上にもつながる。静岡河川事務所の担当者は「今回の複雑な現場制約と厳しい工程を克服するため、3Dプリンターは最適な手法だった」と手応えを語る。
同事務所は11月19日に行政職員を対象とした現場見学会を開催。国土交通省や県、焼津市、吉田町から57人が参加し、特種東海フォレストや3Dプリンターの設計・製造者のPolyuseの担当者の説明を受け、3Dプリンターの活用について理解を深めた。増田進一静岡河川事務所副所長は「3Dプリンターは工期短縮だけでなく担い手不足の解消、働き方改革に貢献するものとして注目されている。実用性を見て、今後の土木施工の参考にしてほしい」と話した。参加者からはコンクリートのスランプの管理方法や使用している部材などについて積極的に質問があり、今後活用を検討したいといった感想も上がった。








