金子恭之国土交通相は4日、奈良県と大阪府にまたがる大和川流域で進行中の先進的な治水対策や関連施設を視察し、地元自治体の首長らと意見交換を行った。金子国交相は「遊水地をはじめ、大和川流域の関係者が連携して実施する『水をためる』対策は非常に参考になる」と強調し、全国展開に向けた意欲を示した。
大和川は奈良県から大阪府へ流れ大阪湾に注ぐ。上流の奈良盆地に降った雨は156本の支流から一気に集まる。府県境の「亀の瀬」と呼ばれる狭窄(きょうさく)部が流域最大のボトルネック箇所で、国内有数の地滑り地帯であるため拡幅は困難。過度な拡幅は下流の大阪平野の洪水リスクを高める恐れもある。こうした地形的制約を背景に、1982年の大水害を契機として、河川改修に依存しない流域治水へと転換が進められてきた。
2021年には流域18河川が全国で初めて特定都市河川に指定され、24年7月には奈良県大和郡山市、同川西町、同田原本町の計4地区が全国初の貯留機能保全区域に指定された。現在は近畿地方整備局や奈良県、県内25市町村などが連携し「ながす(河川改修など)」「ためる(貯留)」「ひかえる(土地利用対策)」を組み合わせた総合的な対策を進めている。
金子国交相は、下流の堺市堺区の大和川高規格堤防整備事業に続き、亀の瀬で実施中の地滑り対策(大阪府柏原市)を視察。深礎工や排水トンネル工など対策工事の説明を受けた。奈良県側では、25年6月に稼働した大和川保田遊水地(川西町)や唐院工業団地調整池(同)を訪れた。
視察後、川西町中央公民館で行われた意見交換会には山下真奈良県知事をはじめ、奈良県内の上田清大和郡山市長、平井康之王寺町長、小澤晃広川西町長、高江啓史田原本町長が参加。国交省から林正道水管理・国土保全局長、齋藤博之近畿整備局長らが出席した。
山下知事は、流域全体で進める「ながす」「ためる」「ひかえる」の対策と進捗状況を紹介した。河川改修など「ながす」対策は25年度時点で整備率約33%。「ためる」対策では17年10月の大規模内水氾濫を契機に緊急対策事業をスタートし、国の補助に加え、県独自の財政・技術支援で市町の取り組みを後押ししている。進捗率は約29%にとどまっており、国の継続的支援の必要性を訴えた。
各首長はハード対策の整備効果を評価する一方で、亀の瀬のボトルネック問題、地下河川整備の必要性、営農支援や維持管理負担などの課題を指摘。林局長は「他省庁とも連携しながら課題を一つずつ解決し、流域治水対策の強化に努めていく」と述べた。
金子国交相は「流域全体で洪水時の流出を抑制する取り組みが進められていることを現地で確認し、治水対策の重要性と難しさを実感した」と振り返り、「今回の視察や意見交換で得た知見を踏まえ、気候変動に対応した河川整備基本方針の見直しを検討するとともに、ハード・ソフト一体で流域治水の取り組みを加速させたい」と語った。






