佐藤総合計画が海外事業で新たな国・地域への進出に動いている。1990年代から大型プロジェクトに取り組んでいる中国に続き、東南アジアに展開。中国で得た経験と実績を生かし、現地の設計事務所や教育機関などと信頼関係を築きながら、一緒に国際コンペに挑む方針だ。鉾岩崇社長ら幹部がシンガポールと台湾の大学で講演し、同社の設計理念や実績などを紹介。今後も交流を重ね連携の可能性を探っていく。
同社は中国で多くの国際コンペに挑み、広州国際展示場(広州市)や天津スタジアム(天津市)、深セン湾体育センター(深セン市)などの設計を手掛けてきた。最近では大湾区サイエンスフォーラム(GSF)常設会場(広州市)、台中国際コンベンションセンター(台中市)が完成した。
中国での豊富な実績が高く評価され、鉾岩社長がデザインコンペの審査員に2024、25年の2年連続で選ばれた。さらに同社は清華大学建築設計研究院と合同でセミナーも開催。現在、清華大学と華南理工大学から留学生を受け入れている。国際コンペで当選を重ねるだけでなく、人材・技術交流なども行いながら信頼を築いてきた。
中国との信頼関係を維持、強化しながら、アジアに展開し海外事業の幅を広げていく方針だ。鉾岩社長は新しい国・地域への進出方法について「まずは大学との関係をつくり、現地の設計事務所との関係も築いていく。その上で一緒に国際コンペに挑む」と語る。
3月17日に台湾の台中逢甲大学建築専門学院で特別講演と展示・交流活動を行った。鉾岩社長が講師を務めた特別講演のテーマは「公共性の新しいかたち」。代表作品や設計思想を紹介するとともに、今後の公共空間や建築の可能性について説明した。
少子高齢化といった日本と同じ社会課題を抱える台湾では、同社が提唱する「共環域」(建築と都市の間の『スキマ』が組み合わさって生まれる環境的・社会的な空間)の概念が注目されたという。共環域は自然の循環と人の営みが重なり合う余白として、都市に変化と関与の余地を生み出す場だ。鉾岩社長は「都市や自然、人々の活動をつなぐ新たな公共性について共有できた。(意見交換などを通じて)共環域の概念が少し広がった」と振り返る。
会場では同社が設計した公共建築約20件と台湾での協働プロジェクトを、パネルや模型、アニメーションなどを用いて紹介。多くの学生や教員の関心を集めたため、後日再び展示されることが決まった。
逢甲大学との交流関係を深めるとともに、「台湾での佐藤総合計画の認知向上や、今後の講演や視察、教育連携につながる機会となった」(鉾岩社長)。
シンガポールには4月7~9日の日程で、牛込具之取締役西日本設計本部長兼AXS未来戦略室長が訪問した。初日にシンガポール国立大学(NUS)で講演し、同社の設計実績や思考方法、今後の可能性について紹介。NUS関係者との質疑応答や意見交換も行った。
シンガポールも少子高齢化が進んでいる。牛込氏は「同じ社会課題を持っているからこそ、『共環域』の概念をプレゼンテーションした。この考え方を共有し共感も得られたと思う。プロジェクトにつながるよう今後もアピールしていきたい」とし、NUSでの展覧会開催に向け具体的な協議に入っているという。
同国の大手設計事務所を訪問し、現地の建築設計界の構造や主要なプロジェクト分野、将来の協業可能性などについて意見を交わした。NUSに紹介された建築や都市空間も視察し、同国での気候適応型の建築・都市デザインの実例を確認してきた。
牛込氏は「(シンガポールでは)設計思想や概念を解像度の高いディテールに落とし込む技術力が求められる。思想と技術をセットで評価しており、そこに日本の設計事務所への期待がある」と分析。同国は人口の約7割を華僑が占めており、「これまで築いてきた中国人ネットワークを生かしていきたい」という。
現在は日本国内の仕事が多く、海外を志向する若手が減っているとの指摘もある。鉾岩社長は「海外に関心を持ち、思考の枠を広げてほしい。(海外で仕事ができる)環境を生かして挑んでもらいたい」と呼び掛ける。今後も継続的にコンペに参加し、建築の国際的動向を読み、世界で戦う力を付けていく。







