神奈川県鎌倉市は、17日に市役所で「新庁舎整備検討会議(本庁舎等整備委員会)」の初会合を開いた。物価や建設コストの高騰を受け、これまでの「公設公営」を断念し、民間の資金やノウハウを取り入れた新庁舎整備にかじを切った。年度内に官民連携の整備手法を決める。次回以降の会合で先行事例を共有し、事業手法を選ぶ際の評価軸を検討する。
冒頭、松尾崇市長は「物価や建設費の高騰、急を要する事業を優先するため、庁舎整備はいったん立ち止まる判断をした」と経緯を説明した。市は財政負担を抑えるため、民間の資金やノウハウを取り入れる。松尾市長は「民間投資の活用、複合施設の在り方、官民連携の手法を検討するのが目的だ」と述べ、市は「官民連携で住宅や店舗、スポーツ施設などと一体となった市庁舎を目指す」とした。
委員会は6人で構成する。委員長には川村雄介グローカル政策研究所代表理事が就いた。副委員長は久保田陽彦鎌倉商工会議所会頭が務める。川村委員長は「民間資金を活用するといっても、民間企業は収益が見込めなければ手を挙げない」と慎重な姿勢を見せた。一方、「国内では同様の事例が多数ある。適切な事例を参考にしながら、実務に詳しい人から直接話を聞く機会を設けてはどうか」と提案した。
委員からは「新庁舎整備を巡っては、懐疑的な声もあると聞く。論点はどこにあるのか」と質問が出た。市は「現庁舎で十分ではないかという声や、(移転先の)深沢地区の防災性を疑問視する声がある」と説明した。
JR鎌倉駅に近い現在の市庁舎は2017年度までに耐震改修を終えた。だが、十分な防災性や機能性を確保できないとして、建て替えを検討。現在地では国が定める基準の床面積を確保できないことから、18年度に移転する方針を決めた。五つの候補地から、JR東日本の大船工場があった深沢地区を移転先に決めた。
22年度に整備基本計画を策定したが、移転に必要な位置条例の改正が議会で否決された。計画を具体化するため、24年度に基本設計を開始したものの、合意には至らなかった。そこで市は、現在の庁舎に意思決定機能を残しつつ、深沢地区の新庁舎に行政機能の大半を移す「両輪体制」の方針を25年7月に示した。
ただ、物価や建設費の高騰で折り合わず、「庁舎整備をいったん立ち止まる」と5月に発表していた。市の試算では、深沢地区の新庁舎整備費用は、21年12月時点の約140億円から、5月時点で約300億円に膨らんだという。
委員会は年度内に計5回開く。第2、3回は評価軸の検討や先行事例の調査に充て、その後、整備手法を決める予定だ。








