災害で損なわれたインフラは、どのように機能を取り戻すのか--。日本工営がその過程を「レジリエンス三角形」で数値化し、復旧計画の最適化につなげるシミュレーション技術を研究している。地震工学の世界的権威、ミシェル・ブルーノ博士(米ニューヨーク州立大学特別教授)が提唱した手法で、被災から復旧までの「機能の落ち込みと回復」を一つの図に描き出す。
インフラの機能低下を縦軸、復旧にかかる時間を横軸で示し、三角形の面積から被災後の機能を定量的に評価する。同社中央研究所先端研究センターの合田哲朗氏は「評価結果を可視化することで、災害に強いまちの実現に貢献できる」と見る。
東京都の第三セクター、東京都下水道サービス(TGS)らと共同で研究している。事前の耐震補強などが下水管ネットワークのレジリエンスに及ぼす影響を定量評価するアプリの試作版を開発した。レジリエンス三角形を使って対策効果を数値化し、国土交通省が主導する3D都市モデル「プラトー」で可視化する。復旧手順の検討や、事業者、住民への説明への活用が期待される。将来はインフラを管理する自治体なども巻き込み、実用化を目指す。
レジリエンスの概念は1973年、カナダの理論生態学者C・S・ホーリング教授が提唱した。「社会システムにショックが与えられた時、それを吸収して元の機能などを維持する能力」と定義され、日本では「強靱化」として広く認知されている。合田氏は「強靱化よりも『復元・対応力』がイメージに近い」と指摘する。インフラの機能維持と早期回復に向けた検討に、レジリエンス三角形を取り入れた。
適用事例の一つが、被災した下水管の応急復旧手順の検討だ。管路の復旧を優先するか、道路を優先するかによって下水機能の回復を比較する。機能回復に伴う汚水量の変化をシミュレーションし、最適な復旧手順を導く。レジリエンス三角形の面積が小さくなる復旧計画を選ぶことで、全体の復元力を効率よく高められる。
道路分野でも研究を進めている。対象範囲内で優先的に補強すべき橋梁を抽出するなど、レジリエンスの考え方を適用する。
防災・減災シミュレーションを精緻化するには、「インフラを束として捉え、災害の連動発生リスクを考慮する必要がある」と合田氏。地震に連動して発生する津波などが、その最たる例という。
2024年の能登半島地震では、「上水が復旧しても下水が使えない」事態が発生するなど、給排水網の相互依存性も浮き彫りになった。レジリエンス三角形は、上下水道を含む土木インフラ全般で、最適な復旧・復興策を検討する手法として活用が広がりそうだ。








