東京都品川区の大井町駅周辺で新庁舎整備を含む再開発が進行している。区はバリアフリーや環境に配慮した新庁舎を計画。2029年をめどに移転を予定している。新庁舎の隣接地ではJR東日本が計画する「広町地区開発」も進む。約2万9400m2の敷地に複数のビルを建て、オフィスや共同住宅として活用する。区と共創し、エリア価値の向上に取り組む。
□動線や環境に配慮した6万平方メートル新庁舎整備/広町地区にタワー2棟含む複合施設計画□
既存庁舎は築56年が経過し、経年劣化が多くみられるため建て直す。区は21年12月に策定した新庁舎整備基本構想を踏まえ、23年1月に新庁舎整備基本計画を策定した。区が目指す「誰もが生きがいを感じ、自分らしく暮らしていける品川」という目標の下、基本設計では▽新しい価値を創り出していく場▽時代に合わせ機敏に変化し続ける場▽誰をも受け入れる開かれた場-の三つをコンセプトに掲げた。
新庁舎の計画地は広町2の2の5(敷地面積約8340平方メートル)。基本・実施設計などの関連業務は日建設計、設計段階で建物機能や諸条件を検討する管理支援業務は三菱地所設計が担当した。
建物は地下SRC・地上S一部RC造地下2階地上14階建て延べ6万0779平方メートルの規模。高さは64・3メートル。基礎工法は場所打ちコンクリート杭を採用する。区は4月7日、新総合庁舎整備工事と関連する設備工事2件の入札を公告した。整備工事の予定価格は425億8408万円(税込み)。入札は7月29日まで受け付け、同日開札する。工事は29年6月29日に竣工し移転作業を開始、同9月中旬頃に開庁予定。森澤恭子区長は2月の予算会見で「エレベーターの納期遅延が発生し、工期が若干延長した」と説明した。
新庁舎を含む広町地区の敷地は、周辺との高低差があるためバリアフリーの歩行者動線を3階に整備する。施設は環境への影響を考慮し、ZEB-Ready認証取得を予定。建築物環境総合性能評価システム(CASBEE)建築、CASBEE-ウェルネスオフィスでSランクの認証取得も予定している。運用ではBEMSを導入する。防災面では首都直下地震を想定した免震構造を採用する。
新庁舎整備に前後し、20年に策定した大井町駅周辺地域まちづくり方針では、新庁舎周辺の土地利用について「区庁舎再編と連携し、区の中心核としてふさわしい複合拠点を形成する」と位置付けた。21年11月には広町地区地区計画を決定した。
JR東日本は大井町駅~浜松町駅間の各駅を「広域品川圏」と位置付け、駅を中心としたまちづくりを推進している。新庁舎の隣接地では同社が計画する「広町地区開発」が進む。
建設中の複合施設「OIMACHI TRACKS(大井町トラックス)」では、大井町駅寄りのA-1地区(敷地面積約2万2300平方メートル)に映画館や病院が入るオフィスタワー(地下3階地上23階建て)と、ホテル(285室)・住宅(272戸)タワー(地下3階地上26階建て)を整備。2棟は地上部でつながっており、総延べ約25万平方メートル、高さ約115メートルを見込む。
新庁舎寄りのA-2地区(約7100平方メートル)には、地下2階地上2階建て延べ約9100平方メートル規模の商業施設と駐車場を建設する。設計はJR東日本建築設計、施工は竹中工務店が担当。26年3月の開業を見込む。
広町地区では歩行者の回遊性を高めるため、大井町駅から大井町トラックスや新庁舎を通り、しながわ中央公園方面へと至る歩行者通路を整備する。車両交通量増加を見込み、既存区画道路の改良や道路の新設、敷地内通路整備などを実施する。
災害対策では災害用ヘリポートを備える近隣のしながわ中央公園と連携し、防災・災害対策拠点を構築する。駅前の特定緊急輸送道路(補助26号線)沿い建物の耐震化や、老朽化した小規模建物の共同化、電線類の地中化なども進める。安全な避難動線を確保し、地域の防災性向上を図る。
大井町トラックスでも災害対策を準備し、施設内に約3000人の帰宅困難者受け入れ可能スペースを確保する。72時間滞在可能な備蓄も用意。新庁舎に隣接する「TRACKS PARK」(4600平方メートル)は発災時に開放し、広域避難場所とする。
区とJR東日本は地域の防災性や大井町駅周辺の拠点性を充実させ、安全に暮らせるまちづくりを推進する。