東京・中野区は大正期に活躍した建築家の後藤慶二(1883~1919年)が設計した「旧中野刑務所正門」の曳(ひ)き家に着手した。29日、「旧中野刑務所正門移築・修復工事」の現場を公開した=写真上。設計・監理は建文、施工は清水建設が担当している。正門が残る敷地一帯に区立平和の森小学校の新校舎を建設するため、正門を現在地から約112メートル西側へ移動させる。
正門はれんが造の平屋で、床面積が約90平方メートルの規模。総重量は約670トン。移築では、まず目的の高さまで揚げ家を行った後、正門をレールの上に載せて油圧ストロークジャッキでゆっくりと押し進める。
移動速度は20~30分で約1メートル。1日に15~17回作業を繰り返し、約7日間かけて目的地まで運ぶ。レールの上には「ころ棒」と呼ばれる直径6センチ・長さ1メートルの丸い鉄の棒が並べられ、その上に鉄板を敷いて滑らせる仕組み。
曳き家に耐えられるよう、現在地で基礎や内部のコンクリート補強を実施した。移動先には免震ピットが設けられており、移築後に正門は免震化される。
曳き家は8月5日、修復工事は2027年2月までに終える予定で、移築後の正門周辺は近接する平和の森公園と一体的に整備する方針。一般公開の開始は28年度を予定している。
同正門は21年に中野区の有形文化財に指定されており、24年4月からは揚屋・曳き家に先立つ基礎補強工事が進められていた。