回転窓/未来を創る公共事業

2025年5月19日 論説・コラム [1面]

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 作家・評論家の堺屋太一氏は2010年5月、NHK教育テレビ「歴史は眠らない」で公共事業論を展開した。4回シリーズのテーマは「ニッポン公共事業物語」。今もこの番組のテキストをよく読み返している▼当時は財政難などを背景に公共事業批判が激しかった頃。現代から平安京の時代までさかのぼり、公共事業が持つ意味を解き明かす内容の番組に学んだことは多い▼例えば江戸時代、3代将軍・徳川家光の治世後期にそれまでの成長が急速に衰える。こうした史実に触れて〈財政が悪化したから公共事業を減らした。それで税収が伸びなくなり、さらに公共事業が減少する、という悪循環に陥った〉と指摘する▼政府は6月にも新たに国土強靱化実施中期計画を策定する。自然災害が頻発・激甚化し既存インフラの老朽化も進む中、さまざまな施策の計画的、持続的な推進が可能となる事業規模を確保してもらいたい▼番組のシリーズ最終回で〈公共事業は本来、「未来を創る」事業、「夢を実現する仕事」〉と堺屋氏。安全・安心の確保だけでなく、そうした次代につなぐ公共事業とは何かがもっと考えられていい。