回転窓/急いでも急がなくても…

2025年5月20日 論説・コラム [1面]

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 地方での単身赴任を終え4月から東京での勤務になった。3年だったが地方に住んで感じたのは生活速度の違いだった▼感覚でしかないのだが東京に戻って思ったのは「街を行き交う人たちはなぜこうも急ぐのか」。それを如実に感じたのは鉄道駅で、エスカレーターの片側を空けずに乗るのは非常識というような雰囲気に戸惑っている▼エスカレーターの誕生時期は諸説あるようだが日本で商標登録されたのは1900年。実際にお目見えしたのは東京・日本橋にあった三越呉服店で1914(大正3)年だそう。動く階段の登場は衝撃的で大人気だったが、9年後に起こった関東大震災の火災で燃えてしまったという▼片側空けは日本特有かと思いきや多くの国で習慣が根付いている。1911年にエスカレーターが初導入されたロンドン地下鉄は降りた先の動線がカーブしていたため、自然と「右立ち・左空け」が定着したそうだ▼昇降機の業界団体や鉄道会社などは安全で快適な利用のため、歩行を控えるよう呼び掛けている。利用時間は長くても1分程度。立ち止まってひと息ついても大して変わらないと思うのだが。