◇安藤ハザマが施工
国土交通省関東地方整備局が霞ケ浦導水事業の一環として茨城県で整備を進めている「石岡トンネル」の掘削工事が、2025年内に完了する。霞ケ浦をハブにして那珂川と利根川の水を融通して渇水を防止したり、湖沼の水質を改善したりするための導水トンネルを構築。トンネルの3工区を施工する安藤ハザマの現場では、無人のバックホウが自動で動く。国交省が推進する施工の自動化を実現している。
霞ケ浦導水事業が始まったのは40年以上前にさかのぼる。直轄ダムがない那珂川は渇水が起きやすく、霞ケ浦を介して利根川の水を融通して渇水を防いでいる。これを「流況調整河川」という。導水トンネルを使って送り込まれた水は那珂川から遡上(そじょう)してくる塩水を押し戻すため、「利水と環境保全の両立」(武藤健治関東整備局企画部技術調整管理官)が期待できる。
導水路は延長約43キロの「那珂導水路」と約2・6キロの「利根導水路」で構成する。那珂導水路はさらに三つのトンネルで構成し、うち水戸トンネル(延長約6・8キロ)は既に完成。未完の土浦トンネル(約11・6キロ)と水戸トンネルの間に位置するのが、水戸と石岡の両市を結ぶ石岡トンネル(約24・7キロ)だ。
同トンネルは既に水戸市と茨城町にまたがっている1、2工区が完成。現在は3工区(約4・8キロ)を安藤ハザマ、4工区(約4・1キロ)を錢高組が担当。5工区(約4・5キロ)を奥村組・大本組JVが担う。三つの工区は順調に工事が進んでいて、「年内にはトンネル掘削が完了する」(阪本敦士関東整備局霞ケ浦導水工事事務所長)予定だ。
関東整備局管内でも有数の大規模現場となる石岡トンネル。安藤ハザマが施工する3工区は、国交省によるi-Construction2・0の推進現場の一つ。シールドマシンで掘削した残土を一時的に保管するホッパーからダンプカーに積み込む作業を無人のバックホウで行っている。i-Con2・0で掲げる「施工のオートメーション化」を体現している。
現場で使用するバックホウはコベルコ建機が開発・販売している。バックホウにはLiDAR(ライダー)とカメラが搭載され、ホッパー内にある土砂の高さやバケットの幅、ダンプカーの位置などを捕捉しながら積み込む。カメラ映像とともにタブレット端末には、重機のブームやバケットを操作するアームの角度が確認できる。
ホッパー内の土砂は4ブロックに分かれ、バックホウですくい上げた量が極端に少なくならないようにしながら土をダンプに積む。ダンプカーの積載重量に応じて積み込む量を調整する。
建設業界が深刻な人材不足に陥る中、機械の遠隔操作や無人化施工が可能になれば「オペレーターを確保する必要がなくなる」(工事関係者)など現場の省人化が期待できる。
3工区では無人のバックホウだけでなく、シールドマシンの遠隔操作なども行っている。現場にはシールドマシンの掘削状況をリアルタイムで確認できる中央管理室を設置している。安藤ハザマが開発した「スマートシールドマシン」は、マシンの位置情報や地盤情報などを一元的に可視化しデータベース化できる。タブレットで関係者間の情報共有も可能だ。
トンネル坑内は通信環境が整っているため、専用タグを着けた作業員の位置情報や入退坑情報も把握できる。安全管理の強化につなげている。
シールドトンネルは泥水式シールド工法で掘進している。コンクリート製のセグメントを1リング組み立ててプレストレストコンクリート(PC)鋼より線で緊張・定着させる「P&PCセグメント工法」を採用している。
最盛期を迎える現場では、約30人がトンネルの掘削作業に従事する。日進量は約32・4メートルで、現在は1200メートル程度を掘り進めている。トンネル工事の進捗率は25%(全体の出来高は50%)に達している。順調に進めば石岡トンネルは年内の掘削完了、26年度の完成を見通す。
才川欽也石岡3工区作業所長(安藤ハザマ)の話
工事は順調に進んでいる。安全を最優先に週休2日確保に努める。他の現場よりも掘進スピードが速く、高速施工の記録も残したい。