改正建設業法で規定する「労務費に関する基準(標準労務費)」を職種別に検討する動きが広がっている。国土交通省と関係団体の意見交換は、現時点で13職種・分野で進展。先行する鉄筋と型枠は、直轄営繕工事の調査などから標準的な歩掛かりを把握し標準労務費の素案を作成する段階まで来ている。中央建設業審議会(中建審)のワーキンググループ(WG)で、標準労務費の作成方法の統一的な考え方も詰まってきた。
職種別の意見交換に着手済みは、▽鉄筋▽型枠▽住宅▽左官▽電工▽塗装▽とび▽内装▽空調衛生▽土工▽板金・屋根ふき▽解体▽鉄骨。トンネルや橋梁、防水、切断穿孔なども意見交換の開催を控える。鉄筋と型枠は、直轄工事の積算実績から金額・頻度の高さを考慮し「標準的な規格・仕様」を抽出し歩掛かりを把握。具体的な数字を素案で示した上で議論している。
標準労務費は基本として「公共工事設計労務単価×国交省直轄工事で用いられている歩掛かり」の計算式で示す。3日のWGで説明した作成方法の考え方によると、歩掛かりは前提となる施工条件や作業内容を明示し、これをベースに個別の現場実態に応じ契約当事者間で補正を行い運用する。高度な技能に応じた労務費の確保が必要な場合、標準労務費そのものを建設キャリアアップシステム(CCUS)別に作成せず、個別工事で労務費を上乗せすることなどで対応する。
上下水道工事など地方自治体の歩掛かりを国が参考明示する場合など、直轄で使用していないが公的主体で定めた歩掛かりも活用。一戸建て住宅の歩掛かりは、住宅関連団体と協力した調査で把握する。歩掛かり設定が困難な事情があり直轄の積算で見積もり方式とする職種などは、明確な数字で歩掛かりを示さず、「現場環境・作業内容などに照らして適正に見積もった歩掛かり」を用いると文字で示す方法を選択肢とする。
WGでは設計労務単価と同じく都道府県別に標準労務費を示すことに「地域間格差を助長しかねない」との意見があるなど、まだ議論が尽くされず方向性が固まっていない論点もある。