政府/南海トラフ地震対策推進基本計画を改定、今後10年の減災目標設定

2025年7月2日 行政・団体 [1面]

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 政府は1日、石破茂首相を会長とする第45回中央防災会議を東京・永田町の首相官邸で開き、防災基本計画や南海トラフ地震防災対策推進基本計画などを改定した。併せて南海トラフ地震防災対策推進地域に16市町村を追加する案も提示した。防災基本計画の改定では、災害対策基本法の改正や火山による広域降灰のガイドライン策定、岩手県大船渡市での大規模山林火災など最近の動向を踏まえ内容を充実させた。=2面に関連記事
 南海トラフ地震防災対策推進基本計画の見直しは約10年ぶり。3月に有識者ワーキンググループがまとめた報告書を基に、最新の知見を踏まえた被害想定に基づき「今後10年の減災目標」を設定。対策は「命を守る対策」と「命をつなぐ対策」に重点を置く。被害想定は最大で死者29・8万人、全壊焼失棟数235万棟。同基本計画では死者数を「おおむね8割」、全壊焼失棟数を「おおむね5割」減らすことを目標に掲げた。
 目標達成のための具体的な施策は、従来の48施策から205施策に大幅に拡充。▽社会全体での防災意識の醸成、総合的な防災体制の構築▽被害の絶対量を減らす取り組み▽ライフライン・インフラの強化▽救助体制・救急救命を強化する施策、防災DX▽被災者支援、災害関連死防止の対策-の5本柱に整理した。
 新たな観点として施策の重点化や災害関連死の防止、複合災害への対応などを加えた。総力を結集した対策を推進するため、多様な主体との連携を強化するほか、これまで不足していた定期的な進捗や効果の把握に努める。
 被害の絶対量を減らすため、建築物の耐震化対策強化や火災対策となる感震ブレーカーの普及促進、海岸保全施設整備などの津波対策、事前復興に向けた取り組み強化などの施策を明記。インフラの強化では送発電網や上下水道施設、通信・放送網などの耐震化、道路など交通インフラの機能確保、基幹交通網の早期復旧体制の構築、石油コンビナートの耐震対策強化などを掲げた。
 防災DX推進やテックフォース(緊急災害対策派遣隊)の体制強化にも力を入れる。6月に定めた第1次国土強靱化実施中期計画とも整合性を取りつつ、施策を展開する。
 被害想定の見直しに合わせて、震度6弱以上や津波高3メートル以上などの地域を指定する「南海トラフ地震防災対策推進地域」に神奈川県綾瀬市や長崎市、熊本市、沖縄県今帰仁村など16市町村を追加した。指定された地方自治体は南海トラフ地震防災対策推進計画の策定が必要になる。地域内に立地する商業施設や宿泊施設なども同計画を作成し、都道府県知事に提出することが義務付けられる。