ウナギ好きの方なら、甘辛いタレと香ばしい風味のかば焼きやうな重を無性に食べたくなる特別な日が近づいてきた。今夏の「土用の丑(うし)の日」は19、31日と2回巡ってくる▼古くからウナギは精が付く食べ物として知られていた。奈良時代の歌人・大伴家持は、夏やせで心配される友人にウナギを食べるよう勧めている。〈石麻呂に われ物申す 夏痩(やせ)に 良しといふ物そ 鰻(むなぎ)取り食(め)せ〉(万葉集巻十六)▼ウナギを伝統食とする日本にとって影響の大きい国際的な動きが先日報じられた。欧州連合(EU)がニホンウナギも含むウナギ属の全種を、絶滅の恐れがある野生動植物の国際取引に関するワシントン条約の対象に加えることを提案。認められれば国際取引の管理が強化される▼EUの提案は11~12月に開く締約国会議で議論される見通し。日本政府は「国際取引による絶滅の恐れはない」と反対する立場を表明している▼〈かぶりつく とろける鰻(うなぎ) 至福感〉(浜名商工会主催・2021年「うなぎ川柳」金賞作)。そんな至福を味わえるウナギが新たな規制で食卓から遠ざからないよう願うばかり。