建設工事の下請取引で法定福利費を内訳明示した見積書を提出した場合、その満額の支払いを実際に受けた割合が向上していることが国土交通省の調査で分かった。2024年度のアンケートで満額以上受け取れたと回答した1次下請は公共工事で80・7%(前年度69・9%)、民間工事で73・0%(65・1%)だった。改正建設業法に基づき労務費と併せて確保すべき必要経費として、法定福利費や安全衛生経費を行き渡らせる重要性は一段と増す。
無作為抽出した建設業許可業者4万者に賃金や法定福利費、安全衛生経費の支払い状況などを聞いた。24年11、12月時点で6972者の有効回答があった。
法定福利費を満額以上受け取れたと回答した下請は、公共工事の2次で76・8%(65・0%)、3次以降で72・0%(81・3%)、民間工事の2次で70・2%(59・1%)、3次以降で59・5%(55・8%)とほとんどが前年度から向上した。この前段階となる内訳明示した見積書の提出割合は公共工事の1次で72・7%(72・5%)、民間工事の1次で58・0%(54・5%)。ほかの請負階層でも前年度から横ばいか微増で、改善の余地がある。
安衛経費は、個々の対策の実施者・経費負担者を元下間で明確化しているのが公共、民間工事ともに半数程度にとどまる。各専門工事業団体による対策項目の「確認表」や関係経費を内訳明示するための「標準見積書」の作成も途上であり、内訳明示した見積書の提出割合はどの請負階層でも10~20%台と低い。
見積書に基づき安衛経費を満額以上受け取れたとの回答は、公共工事の1次で82・9%、2次で78・4%、3次以降で72・7%、民間工事の1次で79・2%、2次で74・4%、3次以降で71・4%だった。
改正業法では受注者に工事種別ごとの労務費や材料費を内訳明示した「材料費等記載見積書」の作成を努力義務化する。12月までの法施行に合わせ法定福利費や安衛経費を内訳明示の対象として明確化される予定で、著しく低い額での見積もりや減額依頼の規制対象となる。