建設工事の元下契約での労務費交渉の実態が、国土交通省の調査で明らかになってきた。建設業許可業者約2万者の回答結果を集計したところ、下請として請負契約で労務費を内訳明示した場合、最初に元請へ提出した「当初見積書」より、価格交渉を経て契約に反映した「最終見積書」の方が低くなったとの回答が3割以上あった。著しく低い労務費への減額変更依頼を禁じる改正建設業法の施行を前に、「建設Gメン」がこの調査結果を端緒とした個別の違反行為の洗い出しに乗り出している。
2024年度「下請取引等実態調査(元下調査)」の設問の一つとして24年6月末まで1年間の取引実態を聞いた。
労務費を内訳明示した見積書を「(おおむね)交付している」下請は70・3%。このうち当初・最終見積書で労務費の額に「差がない」は64・3%だった一方、最終見積書の額の方が「1割程度低い」は19・5%、「1~2割程度低い」は10・9%で、それ以上の減額となるケースも一部あった。
契約後の資材などの価格変動を背景に、元請に価格変更の協議を行ったことがある下請は49・8%だった。この場合に「価格変更が認められた」は87・0%と比較的多かった。元請目線で見ると、労務費の上昇を理由に下請から価格引き上げを求められた場合、協議に応じているとの回答が90・5%に達する。こうした結果から国交省は価格変動時にまず下請から交渉・協議を持ち掛ける重要性を指摘する。
今回の調査では発注者と元請の価格交渉・変更協議の実態把握にも重点を置いた。請負代金の価格交渉で発注者から一方的に金額・単価を設定されたことがある元請は13・9%で、一部で指し値発注が行われている実態がある。価格変更の協議を発注者に要請した場合、拒否されたことがある元請は9・3%だった。ただし拒否されたことはない元請は69・8%、そもそも協議を申し出たことがない元請も21・0%おり、まずは協議を申し出る必要がありそうだ。
工期設定の妥当性について「適当な工期」と回答したのは元請目線で80・6%、下請目線で87・0%。元下間より受発注者間の工期設定の方が厳しいと評価する傾向があり、元請目線で「(比較的・かなり)短い工期」と回答したのは11・7%に上った。