安藤ハザマ/月面放射線防護装置32年に提供めざす、試作品製作やコア技術開発へ

2025年7月31日 技術・商品 [3面]

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 安藤ハザマは30日、月に建設する月面放射線防護装置「宇宙シェルター」と月地下空間構造物「ルナ・ジオフロント」の研究開発戦略を発表した。医療施設やトンネルなどの設計・施工で培った技術やプロジェクトマネジメントのノウハウを応用し、月面に届く大量の放射線を遮蔽(しゃへい)して人が安全に過ごせる空間を構築する。1~2年以内に試作品や施工技術を開発し、2030年ごろまでに本格実証へ移行。32年に宇宙シェルターの提供、45年にルナ・ジオフロントの利用開始を目指す。
 宇宙シェルターは、月面での探査やインフラ整備を行うため、銀河宇宙線や太陽フレアなどの脅威から人や機材を守る装置、空間として構築する。専用パックに、「レゴリス」と呼ばれる衛星や惑星の表面上に見られる岩石由来の粒子や細かなかけらなどを詰める簡易な構造。2カ月間の月面滞在で想定被ばく線量限度を超えないことを目標とする。
 年内にも宇宙シェルターに採用する部材や試作品製作を検討し、月面環境下での組み立て工程も考える。医療施設や研究施設の建屋設計・施工で培ってきた知見も踏まえ、茨城県つくば市の技術研究所にある厚さ100センチの遮蔽扉を備える実験室で3D放射線挙動解析を実施。遠心力載荷装置を使って安全性も検証する。
 ルナ・ジオフロントは月の地下に存在する溶岩洞を利用。居住や植物工場、研究施設などとして建設、提供する。
 山岳トンネルや液化天然ガス(LNG)タンクなどの設計・施工で培ってきたノウハウを応用し、地下空間を計測する探査や溶岩チューブを整形、補強する施工、安定性をモニタリングする維持管理に一貫して取り組む。当面は掘削方法などコア技術の確立を急ぐ。
 同日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開幕した展示会「国際宇宙ビジネス展SPEXA」に出展し説明した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)と連携し、30年頃までに本格実証へ移行する計画。8月1日まで行われる展示会では、研究開発で建設機械メーカーや素材メーカーなどとのビジネスマッチングも視野に入れる。
 同社は宇宙開発戦略の最終目標として、50年頃までに月での地上構造物や火星での構造物を建設する構想も掲げる。