西松建設とNTT東日本は山岳トンネル施工に用いる建設重機の超遠隔操作で、次世代通信基盤「IOWN APN(アイオン オール・フォトニクス・ネットワーク)」と「ローカル5G」を初適用した。建設現場と遠隔操作室の2拠点間通信にAPNを利用。通信環境が不安定な遠隔地にある山岳トンネル現場の無線通信にローカル5Gを組み合わせ、安定した高速で低遅延の通信環境を構築する。2拠点間距離を200キロと疑似設定して映像や制御信号などの遅延を測定した結果、遠隔操作が十分可能であることを確認した。
1日付で栃木県那須塩原市にある西松建設の実験施設「N-フィールド」にローカル5G基地局を開局した。2025年度内に東京都調布市にあるNTT中央研修センタとAPNでつなぐことで、検証をさらに重ねた上で実際の遠隔操作環境を構築していく。
これまでの検証では2拠点間距離を東京都から栃木県までの200キロ程度と想定し、遠隔操作の遅延測定を実施してきた。NTT中央研修センタを活用し、西松建設の山岳トンネル無人化・自動化施工システム「Tunnel RemOS」による遠隔操作の2拠点間通信にAPN、同システムのカメラ映像や制御装置による制御信号の無線通信にはローカル5Gを適用した。結果的に映像・機体情報や制御信号などの遅延は約0・1秒にとどまり、遠隔操作が十分に可能な速度を達成し現場実装が大きく前進した。
西松建設によると、従来の遠隔操作は2拠点間で通信回線が逼迫(ひっぱく)したり、無線区間の帯域・伝送チャンネル数が制約したりして映像伝送が最大約1秒遅れるなど精度に課題があった。APNとローカル5Gを組み合わせ、低遅延で大容量伝送が可能なネットワークを構築。遠隔操作の専用拠点から複数現場を統合管理し、重機を操縦できるようになった。
今後はAPNとローカル5Gを同社の「山岳トンネルデジタルツインプラットフォーム」の通信インフラ基盤に採用。大容量3Dデータや重機の稼働状況をリアルタイムに取得、解析し、山岳トンネル工事の自動化を目指す。