中央建設業審議会(中建審)が検討している「労務費に関する基準(標準労務費)」の運用の大枠を、建設業者や工事発注者に周知する国土交通省の説明会が始まった。労務費を内訳明示した見積書での価格交渉など、従来の総価一式とは異なる対応の必要性を訴える。標準労務費を活用した新たな商習慣への転換を意識付けるのが狙いだ。民間発注者などにも「技能者の賃金にしわ寄せが及べば、持続的・安定的に発注できなくなる」と警鐘を鳴らし、新たな取引ルールの定着に理解を求めた。
標準労務費は改正建設業法のラストピースとして12月までに施行する。現状は中建審のワーキンググループで、職種別での作成に向けた統一方針や、標準労務費をベースに適正な労務費・賃金を行き渡らせる実効性確保策がほぼ固まった段階。その内容を説明会で事前周知するとともに、建設業者や発注者に持ってもらいたい認識、期待したい行動を伝えた。
建設業者には、技能者の賃金原資を競争対象にしないとの認識の浸透を強く訴えた。新たな法規制は、賃金原資を確保しようとする会社にとって価格交渉の「武器」だと強調した。新たなルールに沿った具体的な行動として、受注者が自社として必要な労務費・必要経費を内訳明示した見積書を作成することをポイントに挙げた。
見積書を発注者などが尊重し、必要額を確保する商習慣をサプライチェーン(供給網)全体でつくる必要性を説いた。
発注者には「安ければいい」という認識を捨て、安定的な発注環境の創出というメリットを念頭に置いた受注者とのパートナーシップ構築を期待した。見積書に記載された労務費・必要経費を値切る行為は業法違反になる可能性があるとも伝えた。
20日の東京地区での説明会では、民間発注者から最終的な技能者への賃金行き渡りを確実にする一層の措置を求める声があった。法令上の対応だけでは限界があり、契約当事者には建設工事標準請負契約約款(標準約款)に新設する「コミットメント」制度の活用などの積極的な実践が求められる。