回転窓/夏休みのラッコ

2025年8月21日 論説・コラム [1面]

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 この盆休みも行楽地がにぎわった。三重県鳥羽市の鳥羽水族館もその一つ。国内で唯一飼育されているラッコを一目見ようと、大勢が集まった▼水槽にいるのは、ともに高齢の雌のメイ(21歳)とキラ(17歳)。あおむけになって尾だけを動かし、水面をぷかぷか漂う。餌の時間には両手をほおに添え、小刻みに上体を振るわす。心をキュンとさせる愛らしさを量るなら、最強の海獣かもしれない▼ラッコは野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約によって、輸入がほぼ見込めないとされる。国内の水族館にかつては100頭以上いたが、福岡市のマリンワールド海の中道にいた雄のリロが17歳で1月4日に世を去り、2頭になってしまった▼鳥羽水族館は、混雑のために3月から観覧方法を変更した。移動しながら見学できるルートを設け、水槽前の滞在時間を1分に制限した。それでもまた2頭に会おうと、80分の待機列に並び直す人もいた▼メイは、戦後初の指定から来年80周年となる伊勢志摩国立公園の記念事業PR大使を務める。地域のために人々を魅了する活躍に期待しつつ、2頭だけになった背景に目を向けたい。

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