回転窓/一人一人の最適なWLBを

2025年10月8日 論説・コラム [1面]

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 ワーク・ライフ・バランス(WLB)という言葉を捨てて、働いて働いて働いてまいる--。自民党総裁選に勝利した高市早苗衆院議員の抱負が波紋を広げている▼テレビ番組のコメンテーターやSNSでは「国を立て直す強い覚悟の表れ」として称賛や期待の声がある一方、「時代に逆行する昭和の根性論」との批判も少なくない▼高市氏は議員にも「全員に馬車馬のように働いてもらう」と発破をかけた。国民には「WLBを大切にしてほしい」とコメントしたようだが、一連の発言は励ましよりも圧力として受け止められかねない▼内閣府が2024年3月に公表した働き方に関する調査では、建設業を含む多くの企業が「人員の確保が難しい」「業務量が多く人手が不足している」と課題を挙げた。仕事の処理量を増やすだけでは、深刻な人手不足に対応できない現実は明白だろう▼家庭の事情や背景によって「WLBを捨てる選択肢がない」人もいる。一人一人の価値観やライフステージに応じた最適なWLBが選択できる社会こそ、誰もが安心して働ける環境を築き豊かに生きる力を支える、持続的成長の土台となる。