国土交通省は、道路橋の設計基準を示した「道路橋示方書(橋、高架の道路等の技術基準)」を8年ぶりに見直す。能登半島地震の教訓を踏まえ、新たな形式や素材に対応した設計照査の充実や長寿命化を考慮した性能評価法の採用、能登半島地震を踏まえた復旧性向上などを主眼に内容を充実させる。構成も大幅に変更し、新たに上下部接続部編を新設。代わって耐震設計編を他の編に移す。新たな道路橋示方書は2026年4月1日以降に設計着手する案件から適用する。
道路橋示方書は、つり橋など一部の長大橋を除く支間長200メートル以上の道路橋に適用する。17年度の前回改定では、橋の安全性や性能に対し、細やかな設計が可能となるよう従来の「許容応力度設計法」に代わって「部分係数設計法」と「限界状態設計法」を採用した。
今回の改定では、限界状態設計法を発展させ、主桁や床版などが機能を維持できる範囲で、部材の変形(塑性化)を容認する。隔壁などの構造部材の一部省略やデザイン性を優先した構造の採用が可能になる。地震時にあえて損傷を起こす部材には、損傷後も荷重を受け止められる有効断面積の確保や、損傷後に交換や補修が簡単にできる場所への設置といった新たな要件を追加する。
長寿命化の観点から、耐久性能評価にも「限界状態」を導入。限界状態を超える時点を耐久期間の終わりとし、予防保全に向けた修繕を早期に検討するよう促す。複数の劣化防止策や除湿などの環境制御策を講じる際の扱いも明確化する。
能登半島地震で橋梁アプローチ部が破損するケースが多発したことから、「下部構造編」に橋梁接続部の項目を新設。設計段階から橋台や背面の裏込め材、地盤などを一体的に検討し、被災後も通行可能な路面機能を確保するよう求める。熊本地震のように前震により被害が拡大するケースに備え、設計時に繰り返しの強震動にさらされることを考慮するよう設計基準に盛り込む。