竹中工務店ら3社が、3D空間で位置を特定する「空間ID」を活用した建設現場のロボット運用システムを開発した。建物の平面図と資機材の配置位置などの情報を基にマップを構築。空間IDを活用してロボットが安全に巡回できるルートを導き出す。実証実験の結果、職員による現場確認の業務時間と、システムの開発コストがともに従来と比べ約3割減ることが分かった。今後は実験で得た課題を解決し、2027年の実用化を目指す。
NTTドコモビジネス、アスラテック(東京都港区、酒谷正人社長)と共同開発した。建設現場でロボットを運用する場合、屋内外を行き来したり物体をよけて移動したりするのが難しい。自律移動に必要なマップの作成にコストもかかっていた。3社は22年に空間IDを使ったシステム開発に着手。四足歩行ロボットなどが現場を巡回する実証実験を行ってきた。
「ロボットナビゲーションシステム」は、NTTドコモビジネスが提供する現場の作業間調整の支援システム「tateras(タテラス)作業間調整」に入力した情報を基に、ロボットの巡回ルートを設定する。入力するのは建設現場の図面のほか、日々の作業箇所や重機の位置、資機材の搬出入など施工管理の情報。リアルタイムの施工状況と照らし合わせて柔軟にルートを計画できる。
工程に応じて変わる立ち入り禁止区域や養生エリアなど走行の判断が難しい現場で、高精度なルート計画や自律移動を実現。屋内外や上下階の移動がある複雑な現場でも、各エリアで生成したマップを統合しシームレスな移動を可能する。空間IDをシステム間の共通言語として使えば、異なる機種や複数台のロボットを同時に運用できる。
24年12月に行った実証実験では、ロボットナビゲーションシステムを用いたロボットの巡回作業により現場職員の確認作業の負担を軽減し、業務時間を約30%削減した。空間IDをシステム間の共通言語として活用することで、システム開発コストの約30%削減も可能という。
3社は今後、高所作業車や作業員などの情報の統合を検討するとともに、システムを安定して運用できるようブラッシュアップする。27年にも竹中工務店が施工するオフィスビルや倉庫などで実用化したい考えだ。