市区町村が公立学校を改築、改修する時に費用の一部を国が支援する「学校施設環境改善交付金」で、自治体が申請したものの採択されないケースが2025年度に増えている。文部科学省の当初予算で、同交付金に充てた金額が減ったことが主な原因。財政基盤が脆弱(ぜいじゃく)な自治体では、交付金がなければ着工できないケースも想定される。文部科学省の担当者は「さまざまな機会を捉えて予算を確保していく」と話す。
学校施設環境改善交付金は、災害発生時に避難所としての役割も果たす公立学校施設の安全性を確保するため、国が改築や地震補強、防災機能強化のための整備費の一部を地方自治体に交付する制度。主に小学校、中学校、特別支援学校を対象にしている。市区町村の申請を都道府県が取りまとめて国に提出する。
同交付金の当初予算額は、24年度177億2738万円だったが、25年度は62億2286万8000円に減った。文科省の担当者によると、25年度は4月中旬と6月下旬、自治体に対して採択した案件を通知した。本年度はあと1回、9月上旬に追加の採択案件を決めるという。
多くの小中学校を抱える東京都内の自治体は、不採択案件の増加が鮮明だ。目黒区は25年度1回目に26件申請し、18件が不採択になった。ただ、6月時点で工事の遅れなどはないという。
武蔵野市は1回目に申請した13件が全て不採択。2回目は13件を再度申請したが、採択されたのは1件だった。不採択案件の中には余裕を持った工期を設定している工事もある。このため、同市は今後採択されることを前提に「事業は止めることなく進めていく」(同市担当者)考えだ。
世田谷区も不採択案件がかなり多いという。「断腸の思いだが、補助金なしでも予定通り工事は実施する」(同区担当者)。
新宿区は1回目の申請で23件中16件が採択された。担当者によると「例年より少なめ」だという。今後2件を再申請する予定。もし不採択になるようであれば、自力で予算を確保し工事に入る。北区も不採択になるケースが多いが、必要な改修費用を一般会計の中から捻出して対応する構えだ。
仙台市の4月の採択数は例年の半分以下だった。再申請は工事の進捗状況に応じて決めるという。工事発注件数が減少する中、同市にある建設会社の関係者は「震災工事後、公共事業費が激減する中で受注計画を立てるのに必死で死活問題になる」と険しい表情を見せる。
大阪市は1回目に申請した工事で十数件が不採択になった(24年度の不採択は1件)。再申請したものの、通ったのは1件だけだった。今後も「改築、改修事業は続行する」(同市担当者)方針。そのためにも交付金の再申請を続ける。
福岡市は1回目の申請で3件全てが不採択になったが、6月に国から追加予算確保の連絡があった。当初計画通りの改築、改修ができる見通しだ。
全国的に相次いだ交付金の不採択を受け、全国都道府県教育長協議会は5月、補正予算を通じ必要な財源を確保することなどを関係省庁に要望した。文科省の担当者は「毎年度、施設整備費は当初予算、補正予算合わせて獲得している。本年度もさまざまな機会を捉えて予算を獲得する」と予算の確保に注力している状況を説明した。
8月25日には中核市で構成する中核市市長会(会長・長内繁樹豊中市長)も補正予算で十分な財源を確保するよう同省に緊急要望した。予算をどう手当てするか、全国の自治体、関係団体が注目している。